YUCARI vol.14 ふるさと、お国ことば(マガジンハウス 編)
自分が話すリズムやイントネーションに違和感を持ったり、周囲から訛り(なまり)を指摘されたり、ことばそのものが通じなかったり。標準語を前に、ふるさとのことば=方言を使うことに躊躇した経験を持つ人もいるでしょう。でも、方言は気持ちを和ませ、ふるさとを離れていても、その温かみを実感させてくれる有り難いものです。
近年、その方言の存続を危ぶむ声があがっています。元々、方言は時代とともに変化し続ける宿命のことば。しかし、現代の人の往来、発達したメディアによる情報伝達の急激なスピードアップは、全国津々浦々まで標準語を伝播します。地方の若年層流出や核家族化など生活形態の変化は、方言の伝承機会を奪います。作家・塩野米松さんは、本誌の中で「地方も標準語化が進み、方言が失われつつある」「変化の激しい現代は世代ごとに言葉が違う」「これからは“時代の方言”“時代がふるさと”」と記しています。
方言には、方言でしか表現できないその土地土地の微妙な感覚や思考があります。ご出身の地方の方言を思い浮かべてみてください。風土が色濃く染み入り、ことば一つひとつの中に慣習や生活が刻み込まれた方言は、地方の文化そのものです。懐かしさやふるさとを伝えるかけがえのないことば、人を癒す温かさを持った方言をこのまま失ってよいのでしょうか?
今回の『YUCARI』の特集は、優しく、強く、多彩に日本人のこころを表現する「ふるさと、お国ことば」です。
<特集内容>
・太宰治と宮沢賢治のふるさとへの思い、お国言葉への思い。
・こころに染みるふるさとのことば。
岩手=遠野物語の里を訪ねる/東京=落語に生きる江戸ことば/
島根=八百万の神々が言祝ぐ出雲ことば/高知=坂本龍馬が伝えた土佐弁
九州=『きらり九州めぐり逢い』に見る九州方言あれこれ
・残しておきたい、ふるさとの風景。
滋賀=近江八幡の水郷/沖縄=備瀬(びせ)の海
長野=姨捨(おばすて)棚田/新潟=夏井のはざ木
・.むかし懐かし郷土菓子、全国47品。
・日本の方言は、どのように生まれたのか?
・コラム=もっと知りたい、方言のこと。
① NHK連続テレビ小説の方言の役割
② このことばでこそ、伝えられるモノ・コト
③ 名曲やJ-POPを方言で歌う“なまりうた”
『YUCARI』は、人や地域のつながりを大切にし、日本の伝統文化や古くから伝わる生活習慣をひもとくことで、日本の大切なモノ・コト・ヒトの素晴らしさを改めて実感する雑誌です。