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第18回 バス停にて


コロポックルの小屋

koropokkur

クウネル編集部の塚越です。人より多少サイズが小さいため、コロポックル系に属しています。目線も若干低いので、世界が広く見えて仕方ありません。ここでは、そんな重心低めな目線で見た毎日をお伝えしたいと思います。

 

第18回
バス停にて

猛暑の中、心和んだ出来事をご報告します。
バスを待つ停留所で、聞こえてきた会話。
「最初からあの子の方がいいと思ってたのよー」
「やっぱり結婚するなら気心の知れた相手でないとねえ」
「ほら、前の彼。ちょっと家柄も硬そうだったじゃない。
あれじゃ、お嫁に行ってもかわいそうよ」

誰かお嫁に行くのねえ。
娘さんかしら、姪っ子さんかしら。
そう思って聞いていると、

「だからホントにホッとしたわよ。梅ちゃんの結婚!」

お母さんたちが本気で心配していたのは
連続ドラマの主人公の結婚話でした。

また別の日。
「本当にいい人だったわよねえ」
「誰とでも気さくに話してくれてね。いばったところがなかったもんね」
「寂しくなるわねえ」
「ほんとねえ」

ああ、誰かお友だちがなくなったのかしら。
そう思って聞いていると。

「わたし、大好きだったのよ、チイチイ」

なんと地井武男さんのことでしたか!

ドラマの中の話でも、会ったことのない芸能人でも。
まるで身内のことのように熱くなれるこの感性。
女性ならではの母性によるものなのか、
それとも日本人に共通する国民性なのか。

ああ、なんだかいいなあ、こういう目線。
いいな、いいな。人間っていいな。
懐かしい歌の一節が甦る、夏の出来事でした。