マガジンワールド

第2回 のってけ、ミニバス。


コロポックルの小屋

koropokkur

クウネル編集部の塚越です。人より多少サイズが小さいため、コロポックル系に属しています。目線も若干低いので、世界が広く見えて仕方ありません。ここでは、そんな重心低めな目線で見た毎日をお伝えしたいと思います。

 

第2回
のってけ、ミニバス。

東京郊外にある私の実家。この季節、都心との気温差マイナス3度と言われるこの町に、最近小さなコミュニティバスが走るようになりました。路線バスが通れないような住宅街の細い道を行き来する、1回100円、8人乗れば満員のミニバスです。先日ひさびさに実家に帰った時、初めて利用しました。 

まあ、これが楽しいこと。住宅街を走るため、その速度は犬の散歩並みです。下手をすると犬にさえ抜かれます。振り向いた柴犬が、あざ笑っているようにすら見えます。そんなのろのろバスは、自分が普段利用しないルートで、ずいぶんと遠回りしながら進むのです。 

まず通過するのは、人生の要所要所で写真を撮ってもらった写真館。高校受験、大学受験、就職活動と証明写真はいつもここでした。結婚 写真を撮ってもらうことなく閉館してしまったのが残念でなりません。中学生当時よくケンカした同級生の家の前を通過して、次に通るは、口裂け女が目撃されたという赤い橋。ご存知、昭和の都市伝説。「ポマード、ポマード、ポマード!」。必死で練習しましたっけ。大好きだった銭湯、その跡地もかすめます。潜水の練習をして死にかけました。もうしません。同級生がみんな通った書道教室前も通過します。先生の目を盗んで貪り読んだ『なかよし』と『りぼん』、適当に洗ってカビを生やした筆と硯。この辺りまで来ると、私の中の『思い出ぽろぽろ』はもう止まりません。ノスタルジックな気持ちでバスからの眺めにうっとりです。

そうこうするうちに降りるべきバス停です。ここもまた、幼なじみの 家の前。「遊びましょ〜」と叫びたくなるのをこらえながら、大人のふりして実家へと帰りました。正味15分の時間旅行。次は違うルートにも乗ってみます。