マガジンワールド

第3回 ブラボー、銭湯!


コロポックルの小屋

koropokkur

クウネル編集部の塚越です。人より多少サイズが小さいため、コロポックル系に属しています。目線も若干低いので、世界が広く見えて仕方ありません。ここでは、そんな重心低めな目線で見た毎日をお伝えしたいと思います。

 

第3回
ブラボー、銭湯!

前号で取材をして以来、ちょっとした銭湯ブームが自分の中で起こっております。

いい具合に冷え込んだある日。風呂好きを自認する両親を誘って、地元の銭湯に行ってきました。その数が減る一方の東京において、びっくりするほど盛況のこの銭湯。露天もあれば、マッサージさんもいる。時代に合わせて進化もしているけれど、変わらない昭和の風景がそこにはありました。

小さな男の子を連れた若い奥さんが、お風呂からあがって来たおばあちゃんに声をかける。
「しばらく会わなかったね。元気だった? 」
するとおばあちゃんも
「おや、××ちゃん(男の子の名)。おちん○ん、おっきくなったんじゃないかい? かかかかか(自分で爆笑)」。
そんな下ネタもあっけらかんと交わされる脱衣場です。

常連さんたちの会話を微笑ましく聞きながら、母と連れ立って露天風呂へ。ぽっかり浮かんだ月を見上げながら湯船に沈めば、ここは熱海か湯布院か。柔らかいお湯に極楽浄土を見ます。そこへ、蒙古斑も眩しい赤ちゃんを連れた若いお母さんが入って来ました。「あら~、かわいいわね~。何ヶ月?」などと、ご婦人方の会話も弾む。そんな和やかな風景に「やっぱり銭湯最高!」と、小さくガッツポーズを決めたその直後。赤ちゃんを抱いたお母さんが、ザバッと大波を立てて立ち上がりました。な、何事!? 誰もがその若ママに釘付けです。すると、あろうことか、赤ちゃんのお尻を自分の鼻に近づけひと嗅ぎ、ふた嗅ぎ。凍りつく露天風呂内。そして若ママは、何かを確信したかのような表情で露天を去ったのでした。

その場に残された人々からは「まさか」の表情が読み取れます。まさか、赤ちゃん。やってくれましたか、この浴槽に! 確かめる勇気はもはやありません。ひとり、またひとりと露天風呂を離れ、そして誰もいなくなりました。

その後、2度目の念入りな洗浄を終えて待ち合いに出てみると、そこにはゆで上がった父がオレンジジュース片手に、私たちを待っていました。
「男湯は入れ墨をした若いのが入ってて、ちょっと怖かったよ」
よくよく聞いてみれば、イマドキのおしゃれタトゥをした若者だったようなのですが、父にしてみれば立派な彫り物。必要以上に緊張しての入浴だったようです。

ともあれ面白い体験が出来たので、また行っちゃうよ、東京の銭湯!