マガジンワールド | ブルータス - BRUTUS | 679
  • 目次 & SPECIAL
  • FROM EDITORS

No.679 CONTENTS

features

020 ほぼ日と作った、
吉本隆明特集
ご案内します、どうぞ。──糸井重里
022 人はなぜ、悩むのか?
026 人はなぜ、働くのか?
030 人はなぜ、愛するのか?
034 人はなぜ、忙しいのか?
037 人はなぜ、ペットを飼うのか?
039 人はなぜ、家族を作るのか?
042 人はなぜ、表現するのか?
046 人はなぜ、遊ぶのか?
050 人はなぜ、疑うのか?
053 人はなぜ、友達を作るのか?
055 人はなぜ、テレビを見るのか?
057 人はなぜ、生きるのか?
075 はじめての、吉本隆明
吉本隆明を知る24のキーワード。/よしもとばななが語る、吉本隆明。/吉本隆明の生きた時代。/極私的吉本隆明論。/著作を読んでみる。/最後に講演を聴いてみる。
092 2010年、吉本隆明が「人はなぜ?」を語る。
 

regulars

011 Et tu, Brute?  「ジム・フューリク」ほか
065 Brutus Best Bets 新製品、ニューオープン情報
102

人間関係 398
写真/篠山紀信『芸術女優家』束芋、美波

105 Begin Your Journey 031 横浜市開港記念会館×NISSAN FUGA
107 SUPREME BRUTUS
「ゲン垂水」ほか
116 BRUT@STYLE 225 SMART BALL
120 グルマン温故知新 310 匠 達広/すし 久遠
122 みやげもん 084 出雲人形/次号予告
099 BRUTUS BACK ISSUES/定期購読募集
 
【SPECIAL CONTENTS】
誰もが抱く悩みに、偉大な思想家・吉本隆明が答える。

普段生活していると突き当たる「問い」や「悩み」。本誌では、12の問いを立て、解決のためのヒントを、吉本隆明さんの著作や講演のコトバに求めました。ここでは、5つの問いと、印象的な吉本さんのコトバをご紹介します。詳しい解説や、他の“問答”に関しては、本誌をご覧下さい!

From Editors 1

吉本さんにも何度かお会いすることができました。2時間以上、お茶も飲まずに、話し続けられる姿に感動。


iPodに知恵熱出させながら聴いた、
『吉本隆明 五十度の講演』。

この特集が始まってすぐ、iPodが壊れました。吉本さんのせいです。

昨年の、秋もまだ初めの頃、編集長から「吉本隆明特集をやるぞ」と指令が下されたときには、不安がいっぱいで。正直、高校生のときに試験問題に出てたかな、くらいの接点しかなかったんです。そんな私でいいんですか? 
良くないです。そこで編集長から渡されたのが、今回の特集にも全面的に協力してくださった「ほぼ日刊イトイ新聞」製作、講演アーカイブのMP3セット『吉本隆明 五十度の講演』。「お前の仕事は、まずこれを全部聴くことからだ」と。

とりあえず聴くだけ? これは意外にラクチンと思ったのが甘かった。何せ、この講演集、ギネス認定、計約115時間分(!)の吉本さんの“言葉”が詰まっているのです。じゃあ115時間割けばいいかというと、そうでもなく。滔々とした語りのリズムに引き込まれていると、つい内容が飛んでしまうし、繰り返し聴かないと意味が掴みにくい部分もあって、数倍の時間がかかるわけです。風呂に浸かりながら聴き、ジョギングしながら聴き、トイレでしゃがみながら聴く。そのうちiPodが知恵熱を出して、熱ーくなった挙句の修理直行となったわけです(笑)。

これだけ聴いても、全部を理解できるわけではありません。いや、むしろわからないことの方が多いくらい。それでも、自分の中にじわっと染みこむ言葉がいくつも見つかりました。この特集が動き出すとき、糸井さんは、吉本さんの言葉を「自転車に初めて乗れて、すっと進めたときの感覚」と評されましたが、それを強く実感できたというか。悩みにぶつかって、どっちに答えがあるかさえもわからないような不安な気持ちを “ラクにしてくれる”存在。それが、私にとっての吉本隆明です。ずるいかもしれませんが、何か困ったときに「吉本さんがこう言っていた」と考えられるのは、すごく支えになる気がするんです。

 

●中西 剛(本誌担当編集)

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From Editors 2

超恋愛論(大和書房)。ロマンチストな吉本さんのストレートな恋愛論が展開されている。

そして、僕たちの、
吉本隆明さんの旅ははじまった。

「今のブルータスだったら、吉本さんの特集なんて面白いんじゃない?」
昨年の4月のある日、読売巨人軍特集のために伺った「ほぼ日」の打ち合わせ室で、歓談の合間に、糸井さんの口から、ふと出た一言。その日、僕のカバンには、ある企画のために読んでいた吉本さんの「超恋愛論」が入っていました。そんな偶然。そして、僕たちの“戦後最大の思想家”吉本隆明さんの旅ははじまりました。普段扱っているテーマとは180度ほど違う、僕たちが触っていいのか?という題材。吉本さんの言葉で支えられ、突き動かされ、そして、今日を生きる人は数知れずいます。吉本隆明とブルータス。ブルータスと吉本隆明。旅の一歩が踏み出せずに、不毛に終わる打ち合わせを繰り返していた頃、「ほぼ日」のスタッフの方から、「ブルータスらしい特集作りましょう。なんかあったら、一緒に謝りに行けばいいんですから」。

そして、今、とてもブルータスらしい特集ができました。僕たちはこの特集を作りながら、吉本さん、糸井さん、「ほぼ日」のスタッフの方々から、たくさんのものをもらいました。きっと、吉本隆明を敬愛する人にも、名前すら知らない人にも、何かが伝わるような特集だと思います。この特集ができてもなお、まだ読んでいなかった吉本さんの本が僕のカバンに入っています。まだまだ僕の吉本隆明さんの旅は終わらないようです。

 

●伊藤総研(本誌担当編集)

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From Editors 3

写真は吉本隆明さんの著作の数々。吉本さんプロジェクトチームでは、「あの言葉って、どの本に載っていたんだっけ」という会話が飛び交っていました。

「で、おまえさんはどうする?」と
吉本さんに何度も何度も
問いかけられたような気がしました。

はじめて吉本隆明さんの本を読んだのは、高校生のとき。古本屋さんでたまたま手にした『自立の思想的拠点』という本でした。吉本さんが思想家であるということさえ知らずに、タイトルがかっこいいなあ、という感じで購入しました。レコードで言えば、ジャケ買いですね。

内容はとても難しくて、当時の私に理解できたとは言えないけれど、なぜだか、「私はこう考えた。で、おまえさんはどうする?」と吉本さんに直接語りかけらているような気分になりました。言葉の熱だけは確実に受け取ったんですね。

吉本さんの考える領域はとても広くて根源的だから、自分の問題に照らして読むことができるような気がします。根源的だからこそ、時代が変わっても、言葉が古びてしまうことがないんでしょうね。

私は、日々の生活の中で、これはどうすればいいんだろう、という出来事に出会うたびに、今でもときどき「こういうとき、吉本さんならどう考えるんだろう」と考えます。

吉本さんは、敗戦の時、自分が読んできた知識人たちが今どう考えているのかを知りたかったそうです。でも、その時、多くの知識人たちは沈黙しました。だから、自分がその立場になったとき、沈黙だけはしないでおこうと思ったそうです。

今回、吉本さんの著作を数多く読みなおす機会をいただきました。昔読んだことがあるものでも、今読むと、ああ、これはこういう意味だったんだな、というような発見がたくさんありました。それとともに、25年前のあの時と同じように、「で、おまえさんはどうする?」と吉本さんに何度も何度も問いかけられたような気がしました。

 

●池本孝慈(ほぼ日刊イトイ新聞)

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From Editor in Chief


「人が左右で読めるのは27文字まで。しかも、箱組み(ベタ打ち)ではなく、意味が切れる部分での意味改行をする」という、ほぼ日のルールに従って、話すように書いてみました。少し恥ずかしいのですが、本音であります。ブックインブックは「はじめての、吉本隆明」。これは入門じゃなくて、それぞれの人にとって、吉本さんとの出会いがどれだけ強烈だったか、がわかるオマケです。

わからなくても、とぼけて先に進む。
毎日の仕事も、2010年からの生き方も。

 吉本隆明さんは85才です。
 吉本さんの影響を
 直接受けた団塊の世代は、
 さすがに編集部にはいませんが、
 ブルータスは、
 今年30才になります。
 この雑誌が世に出た頃の
 編集部の先輩たちは、
 きっと、吉本さんの本のフレーズを、
 飲んでいるときにそらんじたりしたはずです。

 去年の春、
 糸井重里さんに誘われて、
 あまりまよわずに、
 吉本隆明特集を立ちあげたのは、
 そんな単純な動機です。

 この特集は、
 ほぼ日刊イトイ新聞、
 つまり“ほぼ日”の人たちと
 毎週のように顔をつきあわせてつくった本です。
 ぼくらが今回、
 なぜ、ほぼ日といっしょに
 この特集を作りたかったかを言います。

 “わかりやすさ”の時代、とか言って、
 いちから簡易にして、
 講座のように読みくだくのが流行りだそうです。
 でも、難しい言葉でしか伝わらないことが
 実はたくさん、あると思うんです。

 だから、ぼくたちは“吉本隆明入門”なんて、
 作ったらだめなんです。
 わかった気になって、
 ひと言ぐらいなら言えるよ、という人を
 作るだけですから。
 なんとなくわかったら、
 もうその先には進まないでしょう。
 だから、
 ひと言で言うと、とか、
 1分でわかる、は、やりたくないのです。

 そこで、ひと言で言えないことを
 どうするかというと、
 信頼できる人にお願いする、
 ということになります。
 それが今回は、糸井重里さんでした。

 ほぼ日は、なんでも
 わかりやすくしてるわけじゃないと思うんです。
 “いまはわからないでもいいよ
 (いつかわかるかも、だからね)”
 という部分を残して先に進む。
 糸井さんと話すといつもそう思うんです。

 吉本さんという巨大で偉大なカタマリがあって、
 その歩き方を教えてくれる人が、
 糸井さんという「ヒモトキ人」です。
 糸井さんは、読み手(作り手)のぼくらが
 道を間違えても、見ていてくれる気がします。
 崖から落ちそうになっても止めないで、
 複雑骨折しても「大丈夫だよ」って
 言ってくれてる気がする。
 それをこの特集に、取り入れたかったんですね。

 だから、
 入門書というより、
 完結した特集だとおもって、
 つづきは、読んだ人がそれぞれにどうぞ。
 と、いろんな人に
 差し出したい本になったと思います。
 どうでしょう、
 おどおどして、足踏みしているより、
 とぼけて、先に進んでしまいましょうよ。
 あとでふりかえればわかることは、
 あとまわしにして。

 

●西田善太(ブルータス編集長)

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