216号:Food男の妄想ひとりめし
男の妄想ひとりめし
微笑ましいやら、ちょっぴりあきれるやらの妄想コレクションをとくとご覧あれ。
Photo: Kaoru Yamada Illustration: hagieK Text&Edit: Daisuke Inoue
西荻窪のカレー屋では、誰もが
ラブストーリーの主人公になる
カレーは、恋と同じで、最初の印象だけで決めちゃだめ。他の食べ物にない、仲が深まっていくストーリーがある。大岩食堂に初めて行った時、3種類のカレーがのったやつを食べたが、何かパンチに欠ける感じ。トレンディドラマの第1話で、出会いは印象そんなによくないみたいなやつ。2回目は、「混ぜながら食べてください」と言われて3種類を混ぜながら食べてみると、あれ、このカレー、今まで気付かなかったけど、こんな一面があったんだと見直しはじめる。これがドラマだと第2話のラストくらい。お互いのいいとこに気づくみたいな話ね。そして話数を重ね、だんだん、他のカレーを食べていても大岩食堂のことが気になったりして、いつの間にかいちばん好きになってたりするわけで、毎日でも食べたくなってたりするわけで、って違うドラマも入ってきちゃったけど。こないだは、最終回前の第9話的な感じで閉店間際にどうしても食べたくて、ダッシュで街を走った。大岩食堂のカレーに会いたくて、街を走る俺。しかも買い物か何かで外を歩いてたお店の人に走ってるの見られた。どんだけ食いたがってるんだ、俺は。そして、ようやく食べると久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」が流れたりして。ついに昨日、大岩食堂の人が前に働いてたカレー屋まで行ってしまった。最終回に恋人の母校に行く『東京ラブストーリー』の要領ですね。そんなことを妄想したりしなかったりします。
細川 徹
脚本家・演出家。主宰するコントユニット「男子はだまってなさいよ!」の新作『男子! レッツラゴン』が、7月30日から本多劇場にて上演決定。また、秋にはドラマ『乾杯戦士アフターV』の新シリーズも放送される。
■Shop Data■
大岩食堂
東京都杉並区西荻南3-24-1 ☎03-6913-6641 11:00〜14:30LO・18:00〜22:00LO 月(不定休あり)/選べるメインのカレーに、豆カレー、サンバル、ラッサム、バスマティライス(長粒米)などがセットになっている。ノンベジミールス(チキンカレー)¥1,600(税込み)。
立ち食いそば屋が奏でる新しいミクスチャー
かき揚げ=天ぷら→ポルトガル語が由来。そば=日本の伝統食→元は大陸から伝来。カレー(ここのカレーは日本風ではなく、サラサラのインドカレー)→インド。それらがひとつになった、よもだそばの特大かき揚げそば半カレーは、まるで新たに創造されたミクスチャーミュージックのようだ!!
東京スカパラダイスオーケストラ
川上つよし
東京スカパラダイスオーケストラのベース担当。デビュー25周年を迎え、記念ベスト盤『The Last』を発売。5月より日本全国にてライヴ、7月からはヨーロッパツアーとワールドワイドな活躍を続けている。
■Shop Data■
よもだそば 銀座店
東京都中央区銀座4-3-2 銀座白亜ビル1F ☎03-3566-0010 7:00〜22:30 無休/自家製インドカレーは“そば屋のカレー”という先入観をいい意味で裏切るスパイシーな本格派。また、個性豊かな週替わりそばを目当てに来店するファンが多い。特大かき揚げそば半カレー ¥620(税込み)。
築地市場に打ち上がる
ぼくのためのスターマイン
やじ満は、なんていうか、劇場っぽいんです。まあ、ただラーメンを食べているだけなんですが(笑)。それでも“やじ満劇場”に参加している感がある。オーダーを厨房に通すために、店員の女の子が、朗々とした大きな声でゆっくりとメニューの読み上げをするんですね。「それでは はいりまーす しゅうまい はんこー にらたまめん いっちょー おねがいしまーす」。店員も客も、店内にいる全員がこの“ぼくのオーダー”を耳にするわけですよ。これが、なかなか気持ちがいい。花火大会でスターマインが打ち上がった後にスポンサー名がアナウンスされる、なんてのはこんな気分なんでしょうか(笑)。
齊藤輝彦
渋谷・富ケ谷の酒場「アヒルストア」オーナー。早いもので6月で7周年。妹と2人ではじめた店ですが、今は健康くんとトオルちゃん、スーパーサブのオカンという、過去最強のパーティで日々を戦っています。
■Shop Data■
やじ満
東京都中央区築地5-2-1 築地卸売市場8号館 ☎03-3541-0729 4:30〜13:00 日祝、休市日/市場関係者ご贔屓の中華食堂。肉々しさがタマらない焼売は、ソースをかけて食べるのがやじ満流。ニラ玉麺 ¥1,000、手作りジャンボ焼売(半個)¥300。*すべて税込み
続きは本誌P.86をチェック!