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映画館で泣くのが恥ずかしかったあの頃。
暗闇で人知れず涙を拭う技術には自信があります。
年を重ねるほどに涙もろくなるのは人の常でしょうが、僕には当てはまりません。僕は、子供のころから、涙腺のコックがゆるみがちでありました。
本で泣きます。昔、横須賀線のボックス席で、浅田次郎『ラブレター』を読んで号泣し、前に座った初老の男性に「大丈夫ですか?」と声をかけられたことがあります。お礼に本をあげました。おじさま、読んでくださいましたか?
コマーシャルでも泣きます。たとえば、ゲーム『ピクミン』のCMソングで泣きます。東京ガスのガスパッチョのCM、織田信長(ピエール瀧)が本能寺に帰るシーンでも泣きます。僕はだから、15秒で泣ける。ピエール瀧で泣ける。僕は、「泣ける男」なのです。
映画? 泣くに決まってます。僕は『タイタニック』で7回泣けたんですよ。
昔は、映画館で泣くのが本当に恥ずかしかった。隣の人にばれないように、涙を拭くんです。眼鏡を直すふりをして、人差し指で拭います。隣にいるのが、親だろうと、恋人だろうと、友人だろうと、見知らぬ人であろうと、泣いてることを悟られたくない。でも休憩の明かりがついたら、目は真っ赤だったでしょうね。
さて、今はどうなのでしょう。デートでも男は泣けるんでしょうか?
涙腺ゆるすぎの僕なので、「泣ける映画」のセレクトには気を遣ってます。脚本家、監督、プロデューサーといった映画を愛し、映画を観つづけ、映画を知る100人に、ジャンルごとのベストをセレクトしてもらいました。ですから、お涙頂戴のセラピー映画は入っていません。泣かせる、じゃなくて、泣ける。
この特集は、観ている側の感情移入の深さが尺度になっています。脚本も演出も演技も音楽もすべてがひとつになって、観客を巻き込むその強さをあらためて思い返してもらえるように。読み終えれば、泣ける映画は素晴らしい映画である、という編集時の仮説が、正しいことがきっとおわかりいただけるかと。
僕は101人目のセレクターの資格はありません。『タイタニック』を7回観たんじゃなく、『タイタニック』1本観るだけで、7カ所号泣したんです。
どうにも泣きすぎなもので。これはこれで問題ですね(涙)。
●西田善太(ブルータス編集長)
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