マガジンワールド | ブルータス - BRUTUS | 688
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No.688 CONTENTS

features

016 美味求真
食にこだわった、男たち、女たちと、その本。
018 木下謙次郎を知っていますか?
024 食べ方とは生き方である。
開高 健/檀 一雄/伊丹十三/水上 勉/辻 静雄
034 食の文化人類学
石毛直道/小泉武夫/森枝卓士
036 女の台所道
幸田 文/森 茉莉/沢村貞子/平松洋子/アマンダ・ヘッサー
038 極める美食
ブリア=サヴァラン/北大路魯山人/吉田健一/勝見洋一/ジェフリー・スタインガーテン
040 料理人の仕事術
秋山徳蔵/辻 嘉一/村上信夫/斉須政雄
042 食の日記文学
永井荷風/古川緑波/池波正太郎/武田百合子/ジュリー・パウエル
044 本物のビールとは何ですか?
049 ビール美味求真。
076 食の言葉。
077 最新プレミアム食材BOOK 日本一のおいしいを探せ!
094 辰巳芳子の言葉。
098 村上春樹、食事をめぐる表現。
102 奇食珍食は美食家への道ですか?
106 グル漫、温故知新。
110 20テーマ60冊、「食本」フルコース。
 

regulars

009 Et tu, Brute?  「KICK-ASS」ほか
119 Brutus Best Bets 新製品、ニューオープン情報
130

人間関係 407
写真/篠山紀信『朱い橋での始まり』生田斗真、大塚寧々

133 Begin Your Journey 040 Volkswagen Polo
135 SUPREME BRUTUS
「ケント・モリ」ほか
144 BRUT@STYLE 233 神田須田町一-十九
148 グルマン温故知新 319 カヴァカヴァロ/幸せ三昧
150 みやげもん 093 うずら車/次号予告
117 BRUTUS BACK ISSUES/定期購読募集
 
【SPECIAL CONTENTS】
プレミアム食材を探せ!
日本全国には、おいしい食材がたくさんあります。本誌では、数ある中から厳選に厳選を重ねた15の食材をご紹介。それぞれの産地を訪ねました。ここでは、そのうちの3品を掲載します。購入方法などを含めた詳しい内容、他の食材については本誌Book in Bookをご覧ください。
From Editors 1

蝉はエビやカキのような味だとか。アメリカではシチューやフライに、山形では甘辛煮にする、とある。こんなもんまで食べるんかい。

出たぁ、キノケンの幽霊。
次々明らかになる交遊関係。
木下謙次郎は今も生きていた。

ここに来て、キノケン、木下謙次郎の資料が次々見つかった。取材を始める時、あれほど調べて調べて、故郷・大分でも聞き込んだにもかかわらず、発見できなかったキノケンの正体。それが、原稿を書き終わった頃に、突如、幽霊のように現れたのである。『美味求真』の初版も初版、第一刷をゲットしたことに始まり、座談会記録に講演記録などなど。どの資料も読み進むにつれて、目の前に3D映像のようにキノケンが現われ、生き生きと動き出してくるのである。オタッキーで深淵な知識を『美味求真』で披瀝する、スタティックなイメージとは明らかに違う、生身の木下謙次郎がそこにいた。

『文藝春秋』昭和6年5月号の「日本料理、支那料理、西洋料理比較座談会」。出席者は謙次郎に〈星ヶ岡茶寮〉北大路魯卿(魯山人)、〈濱の家〉主人、〈千疋屋〉主人、東京日日新聞社会部長、工学博士。司会進行を務めるのは、直木三十五と菊池寛というゴージャス・メンバー。彼らが熊の掌なんぞを食しつつ、どの国の料理が一番発達しているのか、素材のうまさは何者にも優るなどなど、が語られていくのだが、これ、どこかで見たことある風景じゃありません?  そ、まさにこれって、実録『美味しんぼ』。魯山人が貫禄の遅刻をしてきたり、直木三十五がキノケンに「『美味求真』の野菜篇はまだ出ませんか」と聞いたり、キノケンVS 魯山人のスッポン談義があったり、非常にテレビ的でもある。臨場感あふれる内容に、ただただ見とれてしまった。今でもちっとも古くない。キノケンは今も生きている、もっともっと世に出たいのね。そんな風にも感じられた不思議な体験だった。

木下謙次郎様、この特集、喜んでいただけましたか。

 

●渡辺紀子(本誌担当ライター)

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From Editors 2

これが穫れたてほやほやのティアースイーツ。2年前に栽培が始まった新品種タマネギ。なんとイチゴと同等の糖度10度を誇る。


まだまだ広くて深い、
日本・極上素材の魔界。

ネットで、情報化社会で、世の中のどんな美味しいものも、誰でも何でも知るようになった?? それはちょっと早計。 ほんとうのプレステージ中のプレステージ食材は、まだまだ知られざる日本の闇の中に、隠れてる。そんなところから始まった、今回の「プレミアム食材BOOK 日本一のおいしいを探せ!」。例えば、鯛の名所・明石からは、明石随一と誉れ高い腕利き漁師が「鯛よりはるかに旨い!」と太鼓判を押すスノッブ白身魚あり。滋賀県・朽木ではカリスマ・ハンターが本来冬のものと思われていたジビエを、実はより美味しい夏のジビエだけに特化・限定した新ブランドあり。

取材は連日目の覚める新発見の連続、また連続。で、エキサイトしすぎて本誌では、素材自体のプレステージ度と底力の分析と解説ににおされ、実際に体験できるアドレスが、一部書ききれず。この場を借りて補足します。

まずは禁断の夏ジビエ、朽木の夏鹿は門前仲町のイタリアン『パッソ・ア・パッソ』Tel: 03-5245-8645。
生で食べられ、ローストするとほとんどスイーツみたいに甘い最新品種玉ネギ、ティアースイーツは、大阪・高麗橋の野菜バール『べジキッチン・ヤマツジ』Tel: 06-6201-4649。

ともあれ、お陰様でフランス、イタリア、香港などの高級店にもこの20年間でさんざん取材に行かせていただきましたが、今回、再度深まったのは“食材で一番スゴイのは、日本”という確信。まだまだ広くて深い、日本の極上素材の魔界、垣間見てみませんか。

 

●寺下光彦(本誌担当ライター)

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From Editor in Chief

この間、B級グルメの仲間と日暮里「大木屋」に! もんじゃ焼きの店ですが肉がすごい。呼吸をするように全部たいらげた。僕は食の名文家ではないので、どうか写真だけお見せします。肉はダブルであります。えっと、激うま…、いいから一度食べてみて!


時代がどうあろうと、落ち着いて生きていく。
その答えを辰巳芳子さんから聞いたのです。

「くっつけたものはたちまち落ちてしまう」
と受話器の向こうで辰巳芳子さんが言いました。
「食の文章というのは粉飾を許さないの。これほど如実に出てしまうものはないのよ」
午前中の編集部は人まばら。だから、気まぐれで電話を取ることもあります。はい、ブルータスです~。
「辰巳芳子と言いますが…」。ふかしていた葉巻を消し、机の上に乗せていた両足を下ろし、4つ開けていた胸のボタンを上まで締めて、椅子に正座(ぐらいの気持ちです)。企画書を辰巳さんにお送りしていたのですが、まさか直接電話をいただくとは思ってもみなかった。

辰巳芳子さんだ。料理研究家、そして日本の食の「母」。僕はむしろ、名文家の引き出しに入れている人です。品性を保ちながら、問題を喝破する勢い。なにより、言葉のリズムがきわめて美しくて、何度でも読みたくなる文章を書く人。

今回の特集タイトルにもなっている『美味求真』の著者、木下謙次郎や、それよりはるか昔の水野南北(食は命なり! の人)などなど、辰巳さんが好きな(そして嫌いな)食の文章家について、話は尽きません。

今回の特集は、食べて、書いた人たちの言葉を集めました。食べることを表現できた、我々に伝えられた人たちです。おいしかった、とか、激うま、とか、いいから一度食べてみて…なんて言葉は一切ないです、当たり前ですけど。食は我々の最も大きな喜びなのだから、絞り出すように選んだ言葉を楽しんでください。

電話の最後に聞いてみました。
食べることに向き合う心構えをぜひに、と。
「呼吸をするかのように、食べるべきものを作るべきように作り、食べていきなさい。知識としてではなく知恵として。そうすれば時代がどうあろうと、落ちついて生きていかれます」
あとね、と辰巳さんは付け加えます。
「お宅の雑誌ね、胸につきつけてくる言葉とかたくさんあるのにね、字が小さいわよ。もったいないわよ」
あ、はい…。

辰巳芳子さんは今年86才です。
読んでもらえるだけでうれしいんです。本当に。

 

●西田善太(ブルータス編集長)

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