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片方の急な視力低下、"目の心筋梗塞"は早期発見がカギです。

あなたに伝えたい (336)

片方の急な視力低下、"目の心筋梗塞"は早期発見がカギです。

志村雅彦さん
しむら・まさひこ 東京医科大学八王子医療センター 眼科 教授


志村雅彦さん

撮影・武方賢治 文・及川夕子
「片方の視力が急に落ちた、パソコンの画面がぼやけて見えづらい。こうした目の変化に気づいたら、とにかく急いで、眼科や網膜専門の病院を訪ねてほしいのです」

眼科医の志村雅彦さんが多くの人に知ってほしいと訴えているのは、〈網膜中心静脈閉塞症(CRVO)〉と呼ばれる目の病気のこと。原因はよくわかっていないが、網膜の静脈が詰まって、網膜に出血やむくみ(黄斑浮腫)を起こす。

「いわゆる〝目の心筋梗塞〟です。網膜の中でも、黄斑部は視力をつかさどる重要な場所。ここに障害が及ぶと視力低下を来たし、失明に至ることもあります」

罹患率は成人1000人あたり1・6人と高くはないが、視力低下が急に起こるという点では怖い病気。50代から好発するが、働き盛りの30~40代でも起こる。高血圧、糖尿病、緑内障の人に多いと言われている。

「幸い、黄斑部のむくみの原因物質であるVEGFの働きを抑える薬剤(抗VEGF薬)が承認され、視力が改善する可能性が出てきました。1回目の注射で視力が改善し、すぐに仕事に復帰できた人もいます」

気がかりは、視力に違和感があっても、しばらく放置してしまう人が多いこと。

「半年放置してからの治療では、薬剤による視力改善効果が低下してしまいます。普段から片方ずつの変化をチェックし、できるだけ早く気づくことが大事ですね」