ボランティア犬「もか吉」の活躍で犬と地域社会の新しい繋がり方が見えてきた。
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ボランティア犬「もか吉」の活躍で
犬と地域社会の新しい繋がり方が見えてきた。
![新聞記者を経て29歳でフリーに。オウム真理教事件をはじめ、司法、若者など幅広いテーマで取材。オペラをこよなく愛する。](https://img.magazineworld.jp/2016/04/anata_img1.jpg)
![『もか吉、ボランティア犬になる。』(集英社インターナショナル 1,400円)子どもにもおすすめ。](https://img.magazineworld.jp/2016/04/anata_img2.jpg)
人懐こい笑顔の「もか吉」は4歳の雑種犬。人間恐怖症の野犬だったが、いまや防犯パトロールやお年寄りのセラピーに大活躍だ。
飼い主の吉増江梨子さんとの歩みをつづった本『もか吉、ボランティア犬になる。』を書いたのは、江川紹子さん。
「可愛いでしょう? もかちゃんは誰に対しても優しくて、とっても〝癒やし系〟なんですよ」
江川さんがもか吉と出会ったのは2013年秋。東京で開かれたアニマルセラピーの講座で、吉増さんの活動報告を聞いたのだ。
「ボランティア犬はトイプードルなどの小型の純血種が多く、中型の雑種で元野犬というのは異色の存在でした。吉増さんの話と、もかちゃんの優しい目に惹かれて、彼女たちが住む和歌山市に通って話を聞くことにしたのです」
吉増さんは4年前、野犬の母親から置き去りにされて衰弱していたもか吉を家に連れ帰った。
小さな体はがりがりにやせ、びっしりついたマダニに血を吸われて貧血状態。以前は動物病院の看護師だった吉増さんが、ダニを丹念に除去した。感染症に罹り、重度の食品アレルギーもあった。
無表情で、人が触ると硬直していたもか吉だったが、吉増さんとドッグトレーナーの努力で徐々に活発になり、家族のアイドルに。
「飼い主が根気強く世話をすれば犬はこれほど変わるんだ、と驚かされました。さらに吉増さんのすばらしいところは、家族の愛犬にとどめず、地域の人々に愛される犬として育てていったことです」と江川さんは語る。
もか吉は穏やかな性格を見込まれ、ボランティア犬として高齢者施設に通い始めた。いつも不機嫌な人が優しい表情になり、会話不能だった人が昔飼っていた犬の話を始めたことも。「もか吉自身も楽しんでいる」と感じた吉増さんは、犬が参加できる様々なボランティア活動に挑戦していった。
小学校に自由に出入りできるほど人気者となったもか吉。登下校を見守る人が減っている現状を心配した吉増さんのアイデアで、警察と自治会がタイアップした「防犯パトロール犬隊」が発足した。犬の散歩のついでに地域のパトロールをし、子どもたちと触れ合う。既に約80匹が隊員登録し、制度は和歌山市全域に広がりつつある。
「犬たちが普段から地域に溶け込んでいれば、例えば災害時などに、避難所でも受け入れてもらいやすいでしょう」と江川さん。
「1匹の犬と飼い主の思いが周囲を動かし、地域を変えていく。動物と人との新しい関わり方が見えてくる気がしませんか?」
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