ロービジョンの子が喜び、満足し、健常者との理解も深める一助に。
あなたに伝えたい
ロービジョンの子が喜び、満足し、
健常者との理解も深める一助に。
小惑星探査機「はやぶさ」とロケットの写真のノートは男の子向け。パティシエールと羊のかわいいイラストは女の子向け。一見どこにでもありそうな学習ノートだが、これらはロービジョンの子どもたちが待ち望んでいたものなのである。
ロービジョンとは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても充分な視力が得られない、または視野が狭い、視野の一部が欠けているなどで、日常生活や学校・職場で不便を感じる状態のこと。従来は弱視、低視力と呼ばれ、「(ものが)見えにくい」という表現もされる。
「私もロービジョンですが、普通のノートの罫線は細かったり、色が薄かったりで見えにくく、字がはみ出したり、曲がったりします。そこで罫線は太くし、色はいくつかの試作品から、見えやすく文字の黒と混じりにくい濃い緑を選び、イラストは輪郭をハッキリと描いてもらうなどの工夫をしました」
と、KIMINOTE(きみのて)と名づけられたこのノートの製作者、伊敷政英さんは言う。
「実は罫線の太いノートはあります。でも、グレーの表紙の定番の大学ノートだけ。つまり、何十年間も選択肢がないままでした」
去年、ロービジョンの娘を持つ知り合いから相談を受けた。
「彼女は小学1年生。『こんなかわいくないノートを学校に持っていきたくない』と。よし、友だちも欲しがるようなカッコイイ、かわいいノートを作ろう。そう思いました」
クラウドファンディング(インターネットで支援金を募るサービス)「READYFOR?(レディーフォー)」に参加し、今年の8月にノート2000部を製作。全国の盲学校、弱視学級に配った。今はインターネットで販売も行う。
「友だちとの交換日記など、コミュニケーションツールにもなれば。まだ小学生用のノートだけですが、ヨコ罫・タテ罫のノート、日記帳も欲しい、もっと安く作ってなど、たくさんのリクエストをもらっています。できるだけ早く応えられるといいのですが」
ノートの名前「KIMINOTE」には、伊敷さんの子どもたちへの願いが込められている。
「今回は私が手を貸したけれど、与えられるだけでなく、君の手で選択肢を増やしていってほしい。そんなメッセージを届けたくて」
ロービジョンは先天性だけでなく、病気や事故による後天的原因によるものも含まれる。実際はかなりの人数がいるのだが、見え方は個人差が大きく、全く見えないわけではないために、社会的な理解やケアが遅れているのが現実だ。
「ロービジョンの人はルーペや拡大読書器、パソコンやタブレットの画面拡大ソフトなど、さまざまな道具で工夫して生活を送っています。普通にできることもあれば、難しいこともありますが、より自分の可能性を増やすためには、もっと声をあげなくては」
「見えない=できない」ではない。しかし助けが必要なことも。
「できること、できないこと、してほしいこと、してほしくないこと。引っ込み思案にならず、周りの人にきちんと伝える言葉の力を子どもの頃から養ってほしい。KIMINOTEノートがそのきっかけになればと思っています」