「夫婦別姓」を迷っている方に、私たちのアドバイスを贈りたい。
あなたに伝えたい
「夫婦別姓」を迷っている方に、
私たちのアドバイスを贈りたい。
「法律婚に比べてどんなデメリットがあるのか不安で、迷っている方も多いのではないでしょうか。私と妻が実践してきたトラブルの回避方法を紹介し、チャレンジしたい方たちを応援したい」と話すのは、水口尚亮さん。妻の橘昭子さんと共にインターネットサイト「夫婦別姓.COM」を運営し、相談を受け付けている。
4年前に結婚式を挙げた2人は、夫婦別姓にするため婚姻届は出さなかった。「生まれた時からの苗字を変えることに寂しさや抵抗を感じていて、結婚の話が出た時に彼にそう伝えたんです」と昭子さん。尚亮さんは「自分の苗字を変えることも考えましたがやはり嫌だし、それを彼女に強いるのも嫌。じゃあ別姓にしようか、と僕から提案しました」と振り返る。
婚姻届を出さなければ法律上は赤の他人同士。相続や遺族年金で配偶者と認められない、生命保険の受取人になれないなど、様々な不利益が生じる。そこで尚亮さんは行政書士の専門性を生かし、夫婦間の権利と義務をルール化した「準婚姻契約書」を起案、公正証書を作成した。
「夫婦別姓について母は反対しませんでしたが、父はなぜ普通に結婚しないのかと心配しました。契約書のことなども説明し、理解してもらえました」(昭子さん)
昭子さんが出産した時も、尚亮さんが医療処置の説明を受けるために夫婦関係の証明を求められ、契約書が役に立ったそうだ。
2人の子どもたちは、胎児の段階で尚亮さんが父親として認知する手続きを行った。長女は昭子さんの戸籍に入り「橘」姓、次女は尚亮さんが養子縁組して「水口」姓となった。
「娘たちには、成長に合わせてそれぞれの苗字を大切にするよう話していくつもりです」(昭子さん)
「最近は子連れ再婚も増え家庭内で違う苗字を持つ子たちも珍しくない。家族が仲良くしていれば問題はないと思います」(尚亮さん)
2人は他にも「遺言書」や、一方が認知症で判断力を失った場合に財産管理をするための「任意後見契約書」を作成し、法律上の夫婦にかなり近い形の権利関係を築くことができている。
結婚する際に同姓か別姓かを選べる「選択的夫婦別姓」が法制化されればこのように面倒な手続きのある事実婚を選ぶ必要はなくなるが、賛否は分かれており、実現には時間がかかりそうだ。
反対派で多いのは「家族の絆や一体感が希薄になる」という意見だが、昭子さんは「私たち夫婦にはそういうことは全くないですね。理解してくれた夫にいつも感謝しています」とほほえむ。尚亮さんも「まだ誤解が多いのでは。夫婦別姓が家族のあり方の一つとして認知され、社会に受け入れられる日が来てほしいですね」と期待している。