異文化を肌で知る帰国子女たち。日本の学校にグローバルな風を吹き込んでくれる貴重な存在です。
あなたに伝えたい
言葉や文化の壁を乗り越えた帰国子女
体験を生かすサポートが必要です。
日本企業の海外進出が広がる中、海外勤務の辞令を受けてまず悩むのが子どもの教育だ。渡航先でどんな学校に入れるべきか。勉強で後れをとらないためには? 帰国後の進路をどうするか――。
そんな相談を出国前、滞在中、帰国後の3段階で受け付けているのが海外子女教育振興財団だ。「不安を解消してもらえるよう、赴任先の教育環境、お子さんの年齢や滞在年数など個々のケースに応じたアドバイスをしています」と、教育相談室長を務める植野美穂さん。
現地になじむために大切なことは、親がその国の文化を肯定的に見ているかどうかだという。それが言葉の壁を越える意欲につながる。「現地校やインターナショナルスクールに入れた場合、お子さんの性格や年齢にもよりますが、会話がある程度できるようになるまで2年。読解力は学年相応の力がつくまで5年ほどかかるといわれています」
子どもにとって言葉のストレスは大きい。授業を理解し、友人と楽しく話せるようになるまでは不安や孤独もつきまとう。
「昔と違い今はメールやスカイプで日本の友人と毎日やりとりができますが、現地になじむ覚悟が薄れてしまう面もありますね」
せっかく海外の学校に溶け込んだのに、帰国後は日本の学校が合わないというケースもある。
「例えば掃除、給食、整列という日本では当たり前の集団行動に対して、『整列って軍隊みたい』などと違和感を持つお子さんもいるのです」
授業の進め方にもとまどう。受け身の学習が多い日本に比べ、海外ではレポートやディスカッションなど主体的な学びが中心だ。植野さんは教師時代、海外と日本の授業の違いについて帰国生徒たちの声を集めた。
「『日本では知識を覚えることに終始しているが、フランスでは知識を自分の言葉でどう表現できるかが評価される』などと指摘され、驚きました。授業中も日本では普通質問しないような素朴な疑問をどんどん聞いてくる。教師として刺激を受け、教えられたことが多かったですね」
毎年1万人以上の子どもが帰国し日本の学校に入る。だが異文化体験を生かせる環境が全ての受け入れ校にあるわけではない。
「日本人学校に通った子も現地校だった子も、共通するのは個性や多様性を尊重する考え方です。学校側は語学力への期待だけでなく、帰国生の国際感覚や自己表現力を生かし、他の生徒にも良い影響を与えられるような教育をしてほしいと願っています」
相談室で受けている、子どもに関する相談内容の一例
●言葉や環境の違いによる学習の空白期間をつくらないためにはどうしたらいいのか。
●海外で友だちをつくることができず、日本の友だちとメッセージのやりとりばかりしている。
●子どもが日本語を忘れてしまいそうで心配だ。
●帰国したが、日本の学校にうまくなじむことができない。