家族と私、見つめ直す手がかりに。人々が人生の課題に向き合う物語。
あなたに伝えたい
家族と私、見つめ直す手がかりに。
人々が人生の課題に向き合う物語。
登場する人々はそれぞれの課題に向き合い、不安や悲しみを抱えながらも明るさを失わない。再婚家庭の親子関係、大切な人を失った後のグリーフケア。笑いと愛情、涙がちりばめられた日常風景には、考えさせられる。
「登場した家族はきちんと困難に向き合っています。家族の問題と向き合わなければいけないけれど勇気がない、という人は実は多いのでは? この映画が何かのヒントになればと思っています」と、監督の豪田トモさんは語る。
公開された映画は2010年の『うまれる』に続く2作目だ。出産をテーマとする前作品は、これまで40万人以上の観客を集めるヒットとなり、現在も各地で自主上映が続いている。
もともとは出産や家族に全く関心がなかったという豪田さん。
「僕は長年両親との関係が良くなかったんです。弟が病弱だったので僕は放っておかれ、愛されているという感覚を持てずに育った。家族なんていらないと思っていました」
映画製作を学んだカナダで発表した短編作品では、殺人や闘争を描き、数々の映画祭で受賞した。方向性が変わったのは帰国後、「子どもは親を選んで生まれてくる」という言葉を聞いてからだ。
「それまでの僕は、うまくいかないことを親のせいにしていた。でも自分が親を選んだとポジティブに考えてみたら、人生観が一変したんです。そこで出産という家族の原点に立ち戻ってみようと」
第1作で約100組の夫婦を撮影し、親の気持ちが次第に理解できるようになった。「両親に『産んでくれてありがとう』と初めて言えました。『どこの宗教に入ったんだ?』と返されましたが(笑)。30数年かかってようやく本当の意味で家族になれた気がしました」
そして、プロデューサーを務める妻の牛山朋子さんとの間に娘の詩草ちゃんが誕生。偶然にも第1作の公開直後だった。
約半年、休業し育児に奮闘する中で2作目のテーマ〝家族とは?〟が心に浮かんだ。
「子育ては子どもが生きるための手助け。生きるということは、生まれてから旅立つまでの旅路だから、親としてしっかりと死生に向き合い、生きるということを娘に伝えたいと考えたんです」
豪田さんの映画は、一般の人たちをどんどん巻き込んで協力してもらうスタイルだ。企画段階から公式ホームページを立ち上げ、撮影に応じてくれる家族を探す。映像を文字に起こす作業はボランティアを募集。ロードショー終了後もDVD化はせず、自主上映会の開催を呼び掛ける。
「映画を見た方たちがチラシ配りなどをして人を集め、自分の町で上映会を開いてくださるんです。活動を通じて仲間が増え、地域交流が深まる。映画と共に人のつながりが次々と広がっていくことがうれしいですね」と豪田さん。今後もライフワークとして『うまれる』シリーズを撮り続けていく。
東京・シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開中。樹木希林さんのナレーションが心にしみる。上映館などの情報は公式HPで。
http://www.umareru.jp/
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