マガジンワールド

第36回 だって大切なんだもの


ペリカン戸田の遠い夜明け

ペリカン戸田の遠い夜明け sun
クウネル編集部の戸田史です。「いちおう最年少ですが、三十路半ばです」と自己紹介し続けて幾歳月。三十路半ばずいぶん前に卒業したけれど、最年少編集部員からはなかなか卒業できません。ここでは、編集部で(主に)夜な夜な起こる、ヘンな出来事やちょっといい話などをご紹介していきたいと思います。
 

第36回
だって大切なんだもの

今宵のペリカン、パソコンの前でハングルと格闘中です。

次 号の特集は韓国。クウネル取材チームはつい先日まで、秋晴れのソウルを西へ東へと駆け回っていました。取材のためにさまざまなお宅にうかがって、気付いたことがひとつ。韓国の人って、写真を飾るのがほんとうに好きなのですね。

家 庭料理を教わりにいったオモニ(お母さん)の家には、台所の掛け時計の下、息子さんの部屋の入り口、そしてリビングのあちらこちら…と、とにかく至るところに家族の写真が。「これはみんなで済州島に行ったときの写真よ」と、ひとつひとつ、うれしそうに説明してくれました。とある女の子の家にも、テレビの横、棚という棚、そして階段の手すりの間のちょっとしたスペースにまで、額に入った家族写真がずらり、何十枚も飾ってある。離れて暮らす母親(92歳)の写真を食卓の横の壁にひっそりとかけている人、立派に額装した結婚式の巨大な記念写真(ペリカンが両手を広げても足りないくらいの幅がありました)を、寝室の壁にどかーんと飾っている人もいましたっけ(しかも複数人)。これには正直、たまげました。もちろん日本にも写真を飾る習慣はあるけれど、ここまで大きな家族写真のあるお家って、そうそうお目にかかりませんもの。そうそう、少し前までは、家族ひとりひとりに額縁を用意して、生まれてからおじいちゃんおばあちゃんになるまでの折々のポートレート(証明写真のような小さなもの)を少しずつ飾っていく習慣もあったのだと聞きました。ひとつの額の中に、家族それぞれの人生を綴ったのですね。

「韓 国の人は家族をとても大切にする」というのはよく知られた話。知ってはいても、その絆の強さを身を以て実感したことがなかったペリカンですが、今回の取材で、しみじみとそれを感じることとなりました。おいしい食事、ちくちく針仕事、日々の仕事、休日に行くサウナのこと…、インタビューのテーマはさまざまで、登場する方の世代も性別もバラバラなのですが、話題はいつしか、そして当然のごとく、家族のことになっていきました。思い思いに飾られた家族写真は、それを象徴しているようでした。次号では、(主にくいしんぼうな話を通して)おとなりの国の、いろんな家族のお話を楽しんでいただけたらと思います。