第8回 カヌーの虜?
ペリカン戸田の遠い夜明け
第8回
カヌーの虜?
北海道、道央の南方を流れる鵡川(むかわ)の河原。ペリカンおよびクウネル取材チームは、ここにテントを張って一晩を過ごそうとしています。北海道に来た目的は、ネイチャーガイドの大野さん夫妻の取材。今日は、ふたりが企画する1泊2日の川下りカヌーツアーに同行しているのです。
ツアー参加者は5名。札幌から来た内藤さんご夫妻、東京と千葉からは、チカコさんとエミコさん、神戸から参加のミユキさん。みんなカヌーのベテランだ。それに比べてクウネルチーム3名は、ほぼカヌー初体験。「転覆したらどうしよう」「わたし、泳げないんですけど…」と、おっかなびっくりだ。挑戦したのは、1艇に2名が乗り込むタイプのカヌー。ペリカンはバウと呼ばれる前方に乗り、後ろにはガイドスタッフのヤマネさんが同乗してくれた。艇が川の流れにのってきたところで、水面にパドルを差し込み、ぐいっと後方へ水を掻いてみる。おおー、進んだ! ぐんぐんと景色が進んでいく。真っ青な空に新緑が眩しい。白鷺が、まるで私たちの案内役のように中洲から中洲へと飛んでいきます。森のほうからは、エゾハルゼミという春に鳴くセミの声(カエルの鳴き声に似ている)が聞こえてきます。気持ち良いことこのうえなし。怖がっていたことなんてすっかり忘れて、前へ前へと漕ぎ進める。意気揚々と(きっと、鼻の穴を膨らませていたはず)川の流れを読みながらパドルの位置を微妙に変えてみる。ちいさな瀬を渡るときは、まるで滝を下るかのような張り切りっぷりです。しかし、日頃の運動不足がたたって、ほどなくバテ気味になってきて、パドルを動かす手を休めてみた。すると、自分が一緒に漕いでいたときと変わらぬスピードで、カヌーが進んでいるではないですか! 愚かですね。主な動力となっていたのは、後方で黙々と漕ぎ続けているヤマネさんだったのです。ヤマネさん、ごめんね。そしてありがとう! もっと練習して、少しは役に立てるようになりたいものです。それにしても、ゆったりのんびりのカヌーツアー(ペリカンはかなりがむしゃらでしたが)、虜になってしまいそう。
そんなこんなのカヌーツアーを振り返りながら、おしゃべりの花が咲くキャンプの夜。6月初旬とはいえ、北海道の春はまだ始まったばかりで、夜の気温は10度を下回っています。「寒いけど裸足になってみて。火にかざすと、温まるんですよ」と大野さんに教えられ、長靴を脱ぎ、2重に重ねていた5本指ソックスも脱いで、焚火に足をかざしてみる。なるほど、芯からほかほかとしてきた。裸足をぶらぶらさせて、揺れる炎を眺めながらホットワインを飲み、ペリカンはすっかりいい気分になっています。見上げれば満天の星空。さてとそろそろ寝袋に入ろうかな。