マガジンワールド

第7回 おいしいものデスク


ペリカン戸田の遠い夜明け

ペリカン戸田の遠い夜明け sun
クウネル編集部の戸田史です。「いちおう最年少ですが、三十路半ばです」と自己紹介し続けて幾歳月。三十路半ばずいぶん前に卒業したけれど、最年少編集部員からはなかなか卒業できません。ここでは、編集部で(主に)夜な夜な起こる、ヘンな出来事やちょっといい話などをご紹介していきたいと思います。
 

第7回
おいしいものデスク

このひと月は、疾風のように過ぎた。3月は雪の降るベルリンにでかけ、帰ってきたと思ったら、あっという間に花見の季節(仕事じゃないけど)。先週は、パームツリーの揺れる宮崎県に郷土料理の取材に行ってきた。あちこち取材に出かけてきた後には当然、原稿を書く作業がたんまりとあるわけで、夜なべ仕事が続いてしまうのです。

静まりかえった夜中、急にお腹が空いてくる。でもお店はもう閉まっている。そんな時は、編集部にある打ち合わせデスクの上を物色すれば何とかなる。このホームページの連載を見ていただけば想像に難くないと思うけど、編集部のスタッフはみんなくいしんぼうだ。だから、打ち合わせデスクというのは名ばかりで、ふだんは”おいしいものデスク”となっているのだ(月に数回は打ち合わせにも使うけど)。

あんこ野郎ことOさんが持ってくる甘いあんこのお菓子(頻繁に登場するのは、編集部の近所で売っている鯛焼き)、ロンドンに住むIさんからお土産にいただいたチョコレート(パリの『Da Rosa』のものだった)。校正のYさんが必ずと言っていいほど買ってきてくれるおせんべい(銀座の『田子作煎餅』の四角いのが定番)、そしてペリカンが宮崎から宅急便で送っておいた日向夏。たいてい、甘いものとしょっぱいもの、瑞々しいものがちゃんと揃っている。なんと幸せなことよ。

とりあえずお腹を満たすどころか、すっかり満腹になるまで食べてしまう。夜中にこんなに食べて、体にいいわけないよなぁと思いながらも、我慢はできない。いや、我慢するほうが健康に悪いはずだと自分に言い聞かせ、再び”おいしいものデスク”に向かうのだ。