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第20回 にわか鉄子


ペリカン戸田の遠い夜明け

ペリカン戸田の遠い夜明け sun
クウネル編集部の戸田史です。「いちおう最年少ですが、三十路半ばです」と自己紹介し続けて幾歳月。三十路半ばずいぶん前に卒業したけれど、最年少編集部員からはなかなか卒業できません。ここでは、編集部で(主に)夜な夜な起こる、ヘンな出来事やちょっといい話などをご紹介していきたいと思います。
 

第20回
にわか鉄子

朝起きて新聞を開くと、天気予報欄にずらりと晴れマークが並んでいました。全国津々浦々、どこまでもすばらしい秋晴れの空が広がっていると思うと、なんだか気持ちがいいものです(残念ながら那覇と、盛岡と新潟の朝方だけは曇りマークだったけど)。

さて、ペリカンは先日、空ではなく陸を、ずずーっと、ぐるーっと移動し続けていました。早朝の新幹線で東京から神戸へ向かい、神戸電鉄の粟生線に乗ってガタゴト揺られることおよそ1時間、兵庫県の小野市に向かいました。取材を終え(どんな内容かは11月20日発売の次号をお楽しみに!)、粟生駅からJR加古川線で加古川へ。そこから1時間かけ新大阪へ、そして夜中に東京に戻りました。1日のあいだにこんな距離を移動するなんて、かなりせわしない話ですが、これがけっこう楽しかったのです。

神戸電鉄は単線で、街あり山あり畑ありの車窓は見ていて飽きることがなく、線路わきを彩る満開のコスモスの花も見事でした。帰りの加古川線は、ちょうど1時間に1本しかない時間帯で、ちいさな駅のベンチに腰掛けておせんべいを食べながらしばしのんびり。ようやくやってきた電車はかわいらしい1両編成(もちろん単線)。にわか「鉄子」となったペリカン、まるで子どものように運転席の後ろに陣取って、ぐんぐんと後ろに過ぎ去っていく、夕暮れにきらきら光る加古川や田畑を眺め続けました。新幹線や飛行機でびゅんと行ってびゅんと帰ってくるだけの旅では味わえない、この気分。

あの日、ちいさな電車に乗って通り過ぎた風景も、今日は爽やかな青空に包まれているはずです。ああ、空はどこまでも繋がっているのね、なんてクサい言葉も浮かんできてしまいます。