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第9回 夜の散歩


ペリカン戸田の遠い夜明け

ペリカン戸田の遠い夜明け sun
クウネル編集部の戸田史です。「いちおう最年少ですが、三十路半ばです」と自己紹介し続けて幾歳月。三十路半ばずいぶん前に卒業したけれど、最年少編集部員からはなかなか卒業できません。ここでは、編集部で(主に)夜な夜な起こる、ヘンな出来事やちょっといい話などをご紹介していきたいと思います。
 

第9回
夜の散歩

今宵のペリカン、夜の町をてくてく歩き続けている。ここは福島県の会津若松市。この町にはするめを使った郷土料理があると聞き、取材にやってきたのだ。昨日は、するめの天ぷらとそばをいただいた。そして今日の昼間に訪ねたおばあちゃんの家では、するめを使った「ざくざく」という煮物や、「いかにんじん」という漬け物のほかに、蒸したもち米をきな粉につけて食べる「笹まき」や、家の畑でとれたなすやきゅうりの漬け物などもごちそうになった。

噛めば噛むほどに味わい深いするめはペリカンの好物。さらに、しょっぱい煮物や漬け物と、甘いきな粉をつけたもち米の組み合わせは、やめられない止まらないおいしさ。「こりゃぁ幸せなり」と食べ続けた。そして案の定、食べ過ぎた。

夜になっても一向に満腹感は衰えず、寝るに寝られない。「するめってものすごく腹持ちがいいのね」とひとりごちながら、腹ごなしに歩いているというわけです。郷土料理の取材は、いつも幸せなひととき。そのあとに必ずやってくる、ひいひい言いながらの腹ごなしタイム。でもこれは、ごちそうになった料理がおいしいがゆえ。苦しいけれど、うれしい悩みであります。

さて、9月20日に、クウネルから「わたしの作る郷土料理」という本が発売になります。いままで本誌で紹介してきた郷土料理のほかに、会津若松のするめ料理などを新たに加えてパワーアップしています。分量や作り方も紹介していますので、読んで楽しい、作って楽しい一冊になっていると思います。みなさん、ぜひお手にとってください。