第39回 葉っぱの報せ
ペリカン戸田の遠い夜明け
第39回
葉っぱの報せ
今年もまたアジサイの季節がやってきました。切り花を挿し木にして、鉢植えで育て始めたのが5年ほど前のこと。1年目はたった2輪しか咲かなかったのが、今年は20輪。梅雨空のした揺れる白いアジサイを眺め、にんまりしています……と、この季節になると、まいど自宅の植物のことばかり書いているので、今日は編集部にある緑のことを。
思い起こせば9年前、クウネル編集部にやってきた頃から、ひそかに編集部緑化計画を進めていたペリカン。ベランダ付きの小さなビルに編集部があった頃は、朝顔を育てて柵に絡ませてみたり、プランターにバジルの種を撒いたりしていました。マガジンハウスの本社ビルに引っ越してからは、室内でも育てられる観葉植物の鉢を中心に、少しずつではありますが緑を増やしています。
編集部の入り口にはトックリランとガジュマル。ガジュマルの木はクウネルが創刊した時にお祝いにいただいたもので、つまりもう10年近く、編集部で起こったあれやこれやを見守ってきた古株です。
コロポックル塚越さんのデスクの脇には去年、ソングオブジャマイカという陽気な名を持つ植物がやってきました。背高のっぽなので、デスクに向かって鋭意仕事中の塚越さんが、木陰でまどろんでいるように見えることがあるとかないとか。てんてこまい記の永田さんの机のそばには水栽培のアイビーが。これは、自宅の庭で育てているのを数枝切ってきたものだそうです。
窓辺には、とある撮影のために購入したアマリリス。3年目のこの春も、ピンク色のラッパのような花がパカーンと立派に咲きました。コート掛けのそばには、180cmはあろうかという観葉植物(名前がわからない)。同じフロアの別の部署で働いていたAさんが小さな鉢植えから育ててきたもので、定年退職する際、「この編集部、緑が好きな人いるでしょう?」との言葉とともにクウネルに置いていってくれました。
そしてもうひとつ、窓辺で繁っているのが、スタイリストのOさんが編集部のために選んでくれたエバーフレッシュ。ネムノキの仲間で、昼間は悠々と葉を広げ、夜になるとまるで眠りにつくかのように葉を閉じます。1日の時の流れを葉の姿で教えてくれるこの樹はペリカンのお気に入り。夕暮れ時、葉がすこし閉じかけているのを見て「おや、もうこんな時間なのね」と、1日の仕事のまとめにとりかかる。宵の入り、葉がぴたりと閉じて休む頃には「私も帰ろうっと」と席をたつ。こんな具合に時計がわりに活用するのが理想なのですが、さすがに葉っぱの就寝時間にはなかなか帰れません。原稿が書き終わりません。それに、じっさいは腹時計がひとあし先にぐうと鳴り、葉っぱの報せの前に時を知ってしまうことが多いペリカンなのでした。