第40回 ぴったりサイズ
ペリカン戸田の遠い夜明け
第40回
ぴったりサイズ
今宵のペリカン、洋服ダンスのなかをゴソゴソとひっくり返しています。探しているのは、サイズが合わずに引き出しの中で眠っている服。
次号の特集で洋服の仕立てについてとりあげるために、このひと月、あちこちの仕立て屋さんや洋裁店を訪ねたペリカン。自分の体にぴたりと合う、世界にたったひとつの服を誂えるというのは何とすてきなぜいたくなんだろう、としみじみ感じました(くわしくは9月20日発売号をお楽しみに)。肩幅や着丈がフィットした服を身にまとった姿は、凛として美しい。そのたたずまいにすっかり感激したペリカン、せめて、手持ちの服をお直しにだして、かっこいいジャストサイズに生まれ変わらせてみようじゃないの、と思い立ったのです。
まず発見したのが、花柄プリントのサマードレス。柄の美しさに一目惚れしてしまい、ワンサイズ大きいものしか在庫がなかったのに、「いつか太ったら着られるはず!」と、うれしいんだか悲しいんだかわからないことを想定しながら、奮発して買った1着です。数年が経ち、望み通り(?)の体重増を果たしたにもかかわらず、悲しいかなバストに変動がなかったために、あいかわらずのブカブカ状態。このままお蔵入りにするのはもったいないので、お直しすることにします。もう1着は、その昔、冬のロシアを旅したときに、氷点下20度という極寒に耐えきれずに現地で買った分厚いコート。寒冷地仕様で、風を通さずあたたかで快適なのですが、ロシア人体型に合わせて作られているため、袖は長すぎ、肩幅は広すぎ、フードも何もかもが大きすぎ。凍える旅の道中は背に腹は代えられず、そのまま着続けていたのですが、日本に帰って着てみたら、やっぱりかなり不格好。これも、冬に備えて直しておこうっと。
こんなふうにクローゼットを見直してみると、色や柄に惹かれて舞い上がってしまい、サイズの合わない服をけっこう買っていることに気付いたペリカン。チェックの色合わせが気に入っているリネンシャツは肩幅がビミョウに狭いし、ロンドンの古着屋でみつけたホワイトワークのブラウスは、身幅が大きすぎて巻物と化しているし。いい大人なんだから、身につけたときにきりりと格好いい、”自分に合うサイズ”というものを、きちんと把握せねばいかんなぁと、反省しきりの夏の夜です。