第46回 ヒヨドリの置きみやげ
ペリカン戸田の遠い夜明け
クウネル編集部の戸田史です。「いちおう最年少ですが、三十路半ばです」と自己紹介し続けて幾歳月。三十路半ばずいぶん前に卒業したけれど、最年少編集部員からはなかなか卒業できません。ここでは、編集部で(主に)夜な夜な起こる、ヘンな出来事やちょっといい話などをご紹介していきたいと思います。
第46回
ヒヨドリの置きみやげ
編集部の窓辺に、昨年の冬に造園家のOさんからいただいたサフランの鉢があります。紫の花が咲き、伸びた葉が枯れてきたら、次の冬までしばしの休眠期……と思っていたのですが、この夏、鉢からひょっこり芽をだした植物が。どうやら土の中に偶然入っていた種のようです。
葉のかたちはアサガオのよう。日よけのブラインドの紐に絡まりながらにょきにょきと蔓を伸ばしていき、天井まで届いた頃に咲いたのはアサガオでもユウガオでもなく、可憐な白い花。いったいこれは何なのかしら? さっそくOさんに画像を送って尋ねると「ヒヨドリジョウゴですね。ヒヨドリはこの実が大好物なんです」と教えてくれた。秋になると実が赤く色づき、ガラスビーズのような美しさなのだとか。
どこかの街でヒヨドリがついばんだ赤い実が、巡り巡って銀座のすみっこのビルの中で花を咲かせているなんて。秋になって無事に実がついたら、ヒヨドリのかわりにどこかに蒔いてこなくっちゃと思っているペリカン(人間)なのでした。