第47回 かぼすに夢中。
ペリカン戸田の遠い夜明け
クウネル編集部の戸田史です。「いちおう最年少ですが、三十路半ばです」と自己紹介し続けて幾歳月。三十路半ばずいぶん前に卒業したけれど、最年少編集部員からはなかなか卒業できません。ここでは、編集部で(主に)夜な夜な起こる、ヘンな出来事やちょっといい話などをご紹介していきたいと思います。
第47回
かぼすに夢中。
今宵のペリカン、夜中の台所でかぼすをぎゅうっと絞っています。
作っているのは柿のサラダ。取材に訪れた熊本で、細川亜衣さんに教わったばかりのレシピです。柿のほかは、フリルレタスやルッコラなどの葉ものをたっぷり。味付けはオリーブオイルと粗塩、そしてかぼすの優しい酸味だけ。シンプルなひと皿に、秋の豊かな味わいがつまっていて、何度もおかわりしたくなるおいしさでした(詳しくは次号をお楽しみに)。取材を終えた帰りの飛行機の中ですでに、「ああ、もう一度あれを食べたい!」という気持ちが抑えられなくなり、スーパーマーケットに直行して材料を買い込んでから帰宅。そして、夜更けの台所に立っているというわけです。かぼすの爽やかな香りがあたりに広がり、なんとも幸せな気分。
今回の熊本滞在を通して、かぼすの偉大さに目覚めたペリカン(今さらですが)。まぜごはんに、白キクラゲの前菜に、甘みのあるまろやかな酸味が加わることで、やんわりと味がととのう。すだちともゆずとも違う、なんとも控えめな影武者です。焼き魚や鍋のお供にするだけじゃないのね、かぼす様。そんなことをつぶやきながら、毎日せっせとかぼす料理を作っています。
取材先で覚えた味をおさらいするのは、何よりの楽しみ。里芋に煮ころがしに夢中になったり、昆布巻きを作り続けたり、手打ちパスタを仕込みまくった時期もありました。問題は、気に入るとずっと同じものを作り続けてしまう傾向があること。ひとときのブームにするのではなく、ちゃんと自分のものにして、バランスのよい献立を考えなければなりませんね。