第5回 居残りのごほうび?
ペリカン戸田の遠い夜明け
第5回
居残りのごほうび?
夜中に編集部に居残っていると、「ああ、はやく家に帰りたい。こんなに遅くまで会社にいたって、ろくなことがない! わたしの青春(いまさらだけど)はどこに!」そう思うことがしばしばだ。でもときどき例外がある。それは守衛のおじさん(Sさん)が夜食を作ってくれる夜。
Sさんは、出来合いのお弁当や出前を食べるのが苦手だそうで、勤務時間中の食事も、なるべく手作りしているらしい。守衛室をのぞくと、仕事の合間をぬって、備え付けのちいさな電気コンロに鍋をのせて何やら煮込んでいる姿を見かける(夜中だけ)。「まーだ働いてんの? どうせだから一緒に作ってやんべ」てなわけで、たまにご相伴にあずかっているペリカンなのだ。
書類が山積みの机で、悶々とパソコンに向かっていると、編集部の入り口のほうから、いいにおいが漂ってくる。お盆を持ったSさんが「ほら、食べな」とやってきた。待ってました!今夜のメニューは、蕎麦。さといも、こんにゃく、人参、葱などがはいった具だくさんの温かいつけ汁に、別皿で山芋のとろろまで付けてくれた。
この前は、家の庭で穫れた柿を差し入れしてくれた。その前は、根菜たっぷりのけんちんうどん。やきそばや、かぼちゃの煮付けも作ってくれた。Sさんは畑を持っているので、そこで収穫した新鮮な野菜を夜食に入れてくれるのがうれしい。ゴーヤにナス、ヘチマのように細長いカボチャ、らっきょうなど、たくさん収穫があると、おすそ分けもしてくれる。
ちなみにSさんとペリカンは園芸仲間でもあり、わが家のベランダ菜園のゴーヤは、Sさんに苗を分けてもらったものだ。温かい蕎麦をすすりながら、園芸話に花を咲かせる夜のひととき。居残りも悪くないもんだ、って思うのです。Sさん、いつもありがとうございます。さぁ、もうひとがんばり。そして明日は早く帰るぞ!