第57回 マドロス陽一の写真便りその7
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第57回
マドロス陽一の写真便りその7
ku:nel vol.68 「料理上手の台所」が絶賛発売中です。一回目と二回目に続き、三回目となる今回も撮影を担当させて頂きました。
一回目は7年前の2007年。二回目が2010年と、4年ぶりの「料理上手の台所」です。これまでの台所号を引っ張りだし、振り返ってみると様々な台所を撮ってきたのだなと思います。
それぞれの台所が個性的で、生きているようです。その違いを現在発売中の本誌でも楽しんで頂ければ幸いです。
台所の撮影に限らず現場では様々な発見があります。それはvol.25の台所特集、松長絵菜さんの台所撮影のときのことでした。
ファインダーを覗いていて、ふと気が付いたんです。担当編集だったペリカンに「台所写真がなにかわかりました! 台所を撮っているだけでなく、それを使っている人やその気配を撮っているということですよね!!」と思わず声を出してしまいました。いいことを言ったつもりでしたが、そこが最後に撮影する台所だったこともあって、「気付くのが遅かったですね」とペリカンに笑われました。いまとなっては笑い話ですが。
写真は、撮影時になにを撮るべきなのかと考えることで変わります。
なんとなく台所を撮れば、原稿とデザインで誌面に収まりますが、そこに撮り手の眼差しがないと写真は面白くならないと思っています。
今回の「料理上手の台所」。料理研究家の按田優子さんの台所(P.16)でもあらたな発見がありました。
壁一面に並ぶ世界の調味料や発酵食の保存瓶、串刺しの干しみかんの皮など、按田さんの台所はこれまで見たことも味わったこともない知らないもので埋め尽くされ(散らかっているという意味ではなく)、ペルー料理を作っていることもあって、台所に漂う匂いまでが異国のそれでした。これまで台所写真は整っている方が美しいと、まな板の上の食材やお皿の並びなどあらゆるものを見やすいように整えながら撮影していましたが、按田さんの台所を見てワクワクする気持ちをそのまま写真にしようと、あえて整えない撮影を試みました。
ページにする時、デザイナーはそこを感じ取ってくれ、写真のセレクトとレイアウトをしてくれました。ライターは写真で説明がつかない部分を言葉で補足しつつ、力強い文章で台所と料理の関係を根っこの部分まで語ることに成功しています。
平成26年6月20日
マドロス陽一