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第2回 縄文杉に会いたくて


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第2回
縄文杉に会いたくて

縄文杉に会いたくて

朝に弱いマドロス。午前5時に起床。そとはまだ真っ暗です。『縄文杉』ってそこまでしないと見れないのですか。老若男女、屋久島に訪れる多くの人が『縄文杉』目当てにこんな朝早くから山登りに出かけるという。

一泊のコースもあったけど、少し気弱なマドロスは12時間の半日コースを選び、いざ『縄文杉』へ。途中まで車で移動。朝陽が昇る少し前に森に入った。朝露にぬれた美しい苔、たまに会う小動物達におどろき立ち止まる。

なんだか小学校の下校途中を思い出した。寄り道してるといつまでも家に着かないあの遠い感じがちょっと不安でなんでか楽しい。そんな気分は長くは続かない。下ばかり向いて歩いてました。これじゃいかん! と顔を上げ、深呼吸。太陽は真上へ。

景色を楽しむ(ふり)気持ちいい(ふり)なんかいい気分になっている(ふり)充実している(ふり)しかし歩き始めてからずっと一人だ。勝手に身の危険を感じてみたり、来た道を何度か振り返ったりもした。マドロス、あんまり楽しめてません。でも途中現れた屋久杉のスター達には勇気づけられました。

3500年、3世代かけて一本に連なる三代杉。手をつないでいるように見える夫婦杉。巨大な切り株のウィルソン株は洞窟になっている。大王杉は確かに大王のような存在感だった。マイペースとはいえ長時間歩き続けるのは楽じゃない。

帰りのことを考え、何度かそこから戻ろうかと思った。そんなとき『縄文杉』と言葉にしてみる。なんて素敵な響きだろう。ブランド力でしょうか?いや、自然に対する敬意です。ここまで来て、もし『縄文杉』を見ないで帰ったらきっと今夜民宿で後悔するよ。

そして太陽も傾き、心身ともに限界を感じてきた頃ついに『縄文杉』に到着!まず大きい!触れられないのが残念だ。長い年月をかけ何層も重ね続けた樹皮と年輪。それがふくれあがり、足れている。まるで包容力のあるやさしいおばさんみたいだ。会いたかったよ『縄文杉』。

推定樹齢7200年、世界最古の樹よ。世界遺産よ。なによりもここまでたどり着いた達成感。よくがんばった。でもマドロスは自分に嘘がつけない。……大王杉が好きだ。