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第7回 ごめんね佐渡。


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第7回
ごめんね佐渡。

ごめんね佐渡。

先日、佐渡島にいきました。今回で6回目。マドロスがいままでいったことのある島の中で、沖縄本島に続き訪れた回数が2番目多い島は佐渡島。お土産で買った朱鷺(とき)の形の(といっても丸い)紙風船を膨らませながら佐渡島の魅力について考えてみた。

初めて佐渡島にいった時の出来事はちょっと悲惨だったなぁ。マドロスがカメラマンになったばかりの5年前、旅行雑誌の取材で初めて佐渡島を訪れた。ナビゲーターの旅人がその地を旅し、その季節に行われる村のお祭りと観光名所を案内するといった内容だった。

日本海を眺める旅人を海側から撮ろうと思い、浅瀬に入っていった。スニーカーでも濡れないくらいの浅さだが苔で岩場は滑りそうだった。気をつけねば。そう注意しながらもツルっと滑ってしまった。四つん這いになるも怪我はなし。安心した次の瞬間、首から下げたカメラと露出計がゆっくり背中を滑り落ちる感触。「ちょっとまってー」なんて意味のないことを叫んでしまったよ。そして見事に水没……その取材のギャラなんて一瞬にして飛んでいってしまったのさ。

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不幸中の幸い、旅人が持っていたカメラを借り取材は続けることができた。しかし今度は獅子舞が村を練り歩くお祭りの撮影中に、旅人に借りたカメラまで突然動かなくなった。 マニュアル式のカメラは滅多に壊れないのになぜ? 全くの原因不明何度もシャッターを押してもたまにしか動かない。神の仕業か? 超常現象か?後にも先にも新人カメラマン、マドロス最初の試練だったなあ~。

結局その後の写真、ほとんど撮れてませんでしたけども。悪い出来事はまだまだ続きました。担当編集者が財布をなくしたり、移動で使っていた車が沼地にはまってしまって一時間程立ち往生したり、そのために帰りの船に乗り遅れてその日帰れなくなっしまったスタッフがいたり……病人まで出る始末。

渦中、現場の雰囲気を悪くしないように新人カメラマンのマドロスは「大丈夫ですよ~僕の日頃の行いが悪いんですよね。きっと。」なんて苦笑い。起こった出来事からして、どうやら僕ら取材陣全員、佐渡島に歓迎されていないようでした。ごめんね佐渡。それでもマドロス、また来ちゃいました。

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追伸

佐渡島には現在発売中のクウネル13号で「波を撮る僧侶 梶井照陰さん」取材のため3月に訪れたばかりなのに、4月初め再び社員旅行(マドロスはフォイルという事務所に所属している)を兼ね、佐渡博物館で行われていた梶井照蔭写真展「NAMI」(~4月17日終了)を見てきました。館内に展示された梶井さんの荒々しい波の写真からは想像できないくらい、その日の佐渡島の海は穏やかで山頂には雪、空は青く桜も咲き始めた暖かい日でした。どんよりとした佐渡島の冬の厳しいイメージは何処へ。訪れる度に違う顔を見せてくれる佐渡島は何度いってもおもしろいなあ。