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第28回 『富士山よ』おもかじいっぱい・日本の山 ver.


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第28回
『富士山よ』おもかじいっぱい・日本の山 ver.

ここのところ急に寒くなったなぁ。 夏が終わってからしばらく富士山に通っていました。 富士山写真愛好家のおじさん達と同じように夕焼けに染まる赤富士の写真を撮ったり森を歩いたり・・・

静岡県側の新5合目須走口(標高2000m)にある山小屋も今月の上旬には閉鎖され、今年の富士登山やキノコ狩りなどのシーズンも終わろうとしている。キノコ狩りをする人は採ったものを籠に入れるのでシーズンの終わりを『籠納め<かごおさめ>』と言うらしいです。

この前、暗室でプリント作業をしながら聴いていたFMラジオでパワースポットの話をしていた。 パワースポットとは生物の精気の源となるエネルギーが集中している特異な場所のことで、神社やお寺はそういった場所に建てられていることが多いのだそう。 そんなパワースポットが最近話題になっているというのだ。 ゲストが言っていたことで気になることがあった。 それは日本人にとって一番のパワースポットが富士山だということ。

実際に登って感じるだけではなく、富士山を見ること、見ずともイメージすることで元気になるという。
富士山は日本のパワースポットの象徴だと言っていた。 確かに空気が澄んだ晴れた日に東京から富士山が見えると拝みたくなるし力が漲る気もする。銭湯もできれば富士山が描かれていて欲しいと思う。

富士山に通い始めてから確かに元気になったような気がする。標高が高く空気が薄い分、肺活量もふえいつもより声も出ていた。山や自然には生き物を元気にさせる力があるのだろう。 だからだろうか、森で出会うのは元気な中高年のおじさんやおばさんばかりだし、夜の仕事であるスナックを経営するうちの母(ママ)も山登りが趣味だ。

とくに天気のいい日に現像液の匂いのする真っ暗な暗室にいると無性に富士山に行きたくなる。 紅葉ももう終わったんだろうなぁ・・・どうしてるかな富士山よ・・・また君に会いたいな。

去年キノコ狩りに連れていってくれた鈴木安一郎さん(クウネル vol.23『やっちゃんのきのこ狩り』に登場)が言っていたことを思い出しました。 「いつも富士山が気になって、暇さえあれば山に入っていることを富士の病<ふじのやまい>って言うんだよねぇ(笑)」