第71回 最終回。
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第71回
最終回。
この連載は2004年10月からはじまったのでちょうど11年がたつ。当時、編集長だった岡戸絹枝さんに「毎月、撮影旅行で離島へ出かけているので、そこでの出来事をコラムで書かせてください!」と僕からお願いをし、マドロス陽一というペンネームまで頂いた。旅先での出来事を書き、写真を添えることで旅の記録を残したかったことはもちろんだが、文章を書く理由はまた別にあった。
クウネル創刊前の2001年に僕は『シマノホホエミ』という一冊目の写真集を出版した。写真集には日本全国の離島に暮らす10代の少年少女たちのポートレイト写真と島での出来事や撮影の記録が短いエッセイとして収録された。しかし写真家としての活動をはじめたばかりの僕は文章を書くことに抵抗をおぼえた。写真で表現するから写真家なのだと考えたからだ。写真展や写真集のための撮影と依頼され取材で撮る写真。島と東京を頻繁に行き来した。
2002年4月、アートディレクターの有山達也さんに声をかけて頂き、an・an増刊としてはじまったクウネルvol.1に参加。vol.2
『もうすぐ冬じたく』でも編集長の岡戸さんからお仕事を頂いた。その内容は読者カードを送ってくれた盛岡の読者に会いにいくというもので(本誌vol.2 P99『読者と行く小さな旅 時がゆっくり過ぎる街、盛岡。』)、岡戸さんは『シマノホホエミ』を見て「写真だけでなく文章もいいんだから書いてみない?」、そう言ってくれた。しかし当時の僕は「カメラマンなので写真だけでお願いします」と編集長直々の依頼を断わってしまった。そして『シマノホホエミ』から『おもかじいっぱい』がはじまるまでの3年以上、写真家として撮影だけに集中した。
岡戸さんからせっかく「書いてみない?」って言ってもらったのに、それを断ったことを正直いまでも後悔している。『読者に会いに行く』というそれ自体がそもそも魅力的だし、話を聞き、写真を撮り、文章を書く、それをやらせてもらえることの意味をあれからずっと自分に問うている。名もなき人の話を聞き、それを言葉と写真と絵とデザインで読む。そのおもしろさをクウネルの数々の現場で教えてもらった。その後、読者に会いにいくページをやりたい!もちろん写真と文章で!!と何度か編集会議にかけてもらったがそれは未だ実現していない。実現するまでこのコラムで文章を書き続けたかったけどそれは叶いませんでした。
これでいいのだ。
僕はあきらめません。いつか必ずや。
読者のみなさま、そのときはよろしくお願いします。
『マドロス陽一のおもかじいっぱい』は今回で終わりです。
編集部、Webチームのみなさま、長い間お世話になりました。
読んでくださったみなさまに心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。
2015年10月15日木曜日
マドロス陽一