第38回 踊ってみたい
ペリカン戸田の遠い夜明け
第38回
踊ってみたい
有楽町の映画館で、ピナ•バウシュのドキュメンタリー映画を観てきました。ピナ•バウシュは、ドイツの舞踏家であり振付家。ピナは2009年に68歳でこの世を去ってしまったのですが、いまもなお、世界中にファンを持つ踊り手です。映像では主に、ピナが率いていた「ウッバダール舞踏団」のダンサーたちの踊りが次々と繰り広げられました。飛び跳ね、体をくねらせ、転げ回る。舞台上で土や水を大量に使う演目もあり、土まみれ、水浸しになって踊り続けるダンサーたち。あまりの激しい動きに、静止しているときもおおきく肩で息をしている。うごめく手足、汗まみれのたくさんの体。その雄弁さに圧倒されます。
じつはこの映画をペリカンにオススメしてくれたのは、クウネルの校正者•Yさん。校正というのは、原稿の文字使いや表現に間違いや不適当なものがないかどうか、チェックするのが主なお仕事。つまり、Yさんは創刊から10年間ずっと、クウネルに載せる記事を、編集部員以外でいちばん最初に読み続けてきてくださった方。ついでに言うと、ペリカンの夜更けの仕事に根気強く付き合ってくださる、実にありがたい存在なのです(いつもスミマセン)。そのYさんがコンテンポラリーダンスを習い始めたのは、6年ほど前のことだったと思います。レッスンを続けるうちに、みるみるスリムになり、姿勢が美しくなり、動きが俊敏になってゆくYさん。そして何より、日々をいきいきと過ごしていらっしゃるのが、たまにお会いするだけでもとてもよく感じられる。今年の1月、彼女のダンスの発表会を初めて観覧したのですが、体を使ってひたむきに何かを表現する姿に胸を打たれました。
そういえば、この編集部の関係者には、ダンサーがけっこういるのです。まずは編集部のコロボックル塚越さん。こちらはフラを踊り続けてはや十数年。聞くところによると、すでにプロ並みの腕前なんだとか。毎週火曜日の夜にレッスンがあるので、この日は夜8時ごろになると、パウ(フラのスカート)や楽器(太鼓みたいなもの)などを抱え、いそいそと練習場に向かっていきます。いつかコロボックルの踊りを観てみたいなぁ。ライターのTさんも最近フラを始めたし、Yさんも数年前からバレエを習っていて、自宅にはレッスン用のバーもあるって言ってたっけ。
ジャンルは異なれど、踊る人たちはみな、ほんとうに楽しそう。踊っていないときでも、彼女たちのまわりには、健やかな空気が漂っています。そんなことを考えているうちに、ペリカン、だんだんうらやましくなってきました。踊りたいなぁ、春だし。