マガジンワールド

第31回 『シマノホホエミ』だから僕は海を探す。


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第31回
『シマノホホエミ』だから僕は海を探す。

今月、7年前に上梓した処女作、写真集『シマノホホエミ』を改訂することになりました。改訂版の発売に伴い、以前よりページが増えることと写真展の準備もあって最近島に行っていません……。

今年の夏は10年間撮りためた膨大な量のネガを見返す日々で、いつの間にか季節は変わっていました。
『シマノホホエミ』という本は日本全国の離島に住む10代のポートレイト写真とエッセイの作品集です。
10年前、それらの写真を撮るきっかけになった出来事がありました。初めて宮古島に行ったときのこと、その日はちょうど卒業式のようでした。カメラ片手に平良(ひらら)の街を歩いていると、両手に花束を抱え、きらびやかな駄菓子を張り合わせた首飾りをつけ、卒業式を終えたばかりの女子中学生達が街の古い写真館にあるプリクラに並んでいました。

驚いたことに彼女たち全員、黒い制服が全身粉まみれで真っ白になっているではありませんか。僕は何事かとその理由を聞くよりも先に「写真撮ってもいいですか」と声をかけていました。のちに聞いたところによると、在校生が感謝と追い出しの意味を込めて卒業生に小麦粉を投げつける風習がこの島の卒業式にはあるらしく、全身が真っ白になればなるほど在校生から慕われている証なのだと彼女たちは誇らしげに説明してくれました。

東京に戻り、真っ暗な暗室でその写真を現像しながら、日本の島々には見たことも聞いたこともないこの写真のような風景があるのだろうなと思いました。それから島に通うようになって今年で10年になります。当時撮影に協力してくれた10代は既に成人しています。

島に残った人もそうでない人もみんな元気にしているでしょうか。そんなに長くはない、でも決して短くもない時間が流れました。これまで何度も考えた「なぜ島で写真を撮り続けるのか?」ということをこの夏、古いネガを眺めながら改めて考えました。

写真を撮り始めた時に思ったことと現在考えていることが、それほど変わらないことに写真家として成長していないんじゃないか……と頭を抱え悩むような……。でも、もうそんな思い患うような年齢でもないか。

「これからは好きなことを好きなようにやっていく!」といつもお世話になっているA氏から最近よく耳にするのですが僕も秋の夜長に「好きなようにしよう……」と突き進む覚悟を決めた次第でアリます。よって?!告知させてください!


●改訂版『シマノホホエミ』長野陽一 著
2008年10月20日フォイルより発売

まだまだ会期中!
写真展「シマノホホエミ」@FOIL GALLERY 
~10月31日(金)12:00~19:00 日曜祝日12:00~18:00 
http://www.foiltokyo.com

福岡でも開催が決まりました!
写真展「シマノホホエミ」@福岡 B・B・B POTTERS 5階ギャラリー(福岡市中央区薬院1-8-8)
11月7日(金)~18日(火)13:00~20:00 ※最終日は~18:00 入場料無料

*特別イベント
竹井正和×長野陽一ワークショップ「福岡即興撮影会 」
2008年11月8日(土)13:30~19:00頃 
B・B・B POTTERS 5階ギャラリー集合
参加費 3000円(要予約・先着20名)
※ご予約・お問い合わせはブックオカ実行委員まで
http://www.bookuoka.com