第1回 泳ぐ馬
僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。
http://yoichinagano.com/
http://yoichinagano.com/
第1回
泳ぐ馬
「フェリーよなぐに」にのって与那国島へ。ひとつのところにしばらく滞在すると毎日通ってしまう行きつけのような店ができる。
『ユ・キ・さ・ん・ちのカレー』という店もそのひとつで、日替わりメニューをいいことに毎日かよった。僕は、上り坂を自転車で上るのが苦手でいつも途中で降りてしまうような根性なし。でも、お店は上り坂の途中に誘惑するようにあります。
ある日の牛モツのカレーがおいしかったです。その店で知り合ったマーくんが、海で馬に乗るという。マーくんといっしょに海岸へいく。馬は泳げるのかと聞くと、無言でマーくんは沖にむかった。
泳ぐ馬を初めて見た。犬かきならぬ馬かき?その姿はおもったより自然だった。波打ち際にプカプカ浮かぶ馬糞もまた、おもったより自然だった。