第30回 えっ!お寿司
http://yoichinagano.com/
第30回
えっ!お寿司
今月発売のクウネルは沖縄の特集です。マドロスも沖縄本島と宮古島で撮影をさせて頂きました。どちらも今まで何度も訪れたことがある島でしたが今回の取材で知らなかった沖縄を体験する事が出来ました。
今号ではそんな沖縄のいろんな部分が沢山紹介されています。なんだか『クウネル友の会~』の編集長のお言葉の様な文章になってしまいましたが、やはり沖縄は魅力的だったのです。今回の『おもかじ~』は宮古島のお隣、池間島取材に向かう車中でのお話を書きます。
以前から僕の友人で平良(島の中心街)の目抜き通りにある『濱元商店』のお嬢様、濱元さんに案内してもらい編集の太田さんと共に取材先のお隣の島、池間島に車で向かう道中。
市外へしばらく走ると左手にサトウキビ畑と海だけの景色がしばらく続いた。「車がないと島は不便だからね」と濱元さん。僕と太田さんは車がなかったらこの道のりは大変だろうなと遠い景色を眺めながらうなずいた。「3年前の夏かな…スゴく大きな台風が来たんですよ。その台風であの先に見える3本の風力発電が全部倒されてね。
それで風力発電とは関係なく市内の中心部は3日間停電してさ。島全体で約1週間、池間島は2週間ほど完全に復旧するまで時間がかかったんですよ。あの時は大変だったなぁ。電気が使えなくて何が辛いかったかと言ったら、暑さなんです。今では宮古の人もみんな冷房のある生活をしてるでしょう。それが急に使えなくなったもんだから特に若い人は夜、暑くて眠れないわけですよ。暑さには本来強いはずなのに……
それでみんなが車に乗り出したんです。災害のラジオを聞きながら車の冷房で涼むために。毎夜、車の中で寝てる人もいるほどでした。あの時ほど車が有り難いと思った事はなかったですね。ただ島が停電していた間、みんなが車に乗り出したもんだから、渋滞が起きたんです。普段だったらあり得ないんですよ。『ああ~島で渋滞が起きてるよ!』って島での渋滞を生まれて初めてみたわけです」と濱元さんは停電中の車での生活のことを話してくれた。まっすぐな道は続いた。
前方を走る車が制限速度内でのんびりと走っている。きっとこれが島時間なのだろう。少しばかり急いでいた気持ちを落ち着かせた。「最近は交通違反や飲酒運転の取り締まりが厳しくてね。
こんな誰もいないような場所でもたまに取り締まっていたりするから島の人は気をつけているんです。携帯電話で話しながらの運転もダメでしょ。でも何か食べながらの運転、例えばおにぎりやパンを食べながら運転するのは違反じゃないんですよね。なんででしょうね?私の友達が運転席のダッシュボードの上にお寿司と小皿の醤油を並べて箸まで使ってお寿司屋さんさながらで運転しているですけどそっちの方が携帯電話よりもよっぽど危ないですよね(笑)」宮古島と池間島を結ぶ池間大橋にさしかかった。右手後方には大神島が見えた。海が浅く海中の白い砂浜から海面へ光が乱反射する。
そんなコバルトブルーの海を横目に車の窓を少しだけ開けた。気持ちいい潮風にこれから撮影する池間島の行事。ワクワクした。ただ運転しながらお寿司に醤油をつけ、箸で食べている濱元さんの友達の姿を想像せずにはいられないまま……。