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第37回 『島っ子たちのラスト・フラ』+『島フラ』


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第37回
『島っ子たちのラスト・フラ』+『島フラ』

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小笠原のフラダンスを取材したクウネル最新号がいよいよ発売となりました。『島っ子たちのラスト・フラ』というタイトルで、マドロスが写真と文を担当しました。毎年夏、父島で行われるフラダンスの発表会『フラ・オハナ』。進学や就職で島を離れる島っ子たちの最後の舞台、最後の夏のお話です。是非ご一読下さい。

父島と母島で小笠原フラが始まり、かれこれ12年になるそうだ。海洋生物の研究、保護をしている『小笠原海洋センター』の所長、山口真名美さん(島の大人から子供まで皆から、親しみを込め「真名ちゃん」と呼ばれている)がとあるイベントで一曲踊ったことが事の発端だった。最初は少人数だったフラの集まりを 『ナァ プア(花)ナニ(美しい)オマクア(親)』通称プア・ナニと真名ちゃんは名付けた。現在、それが踊りのクラスに限らず、演奏やコーラス、レイ作りのグループなど、小笠原のフラに関わる全ての島民、約300名で構成されるフラの大家族になった。

踊りのクラスは15クラスに分かれている。まずは女子未成年のクラスから。初心者クラスの『ケイキ(ハワイ語で子供の意味)』、そして小学校高学年くらいから『タマナ(タマナの木)』、主に中高生のクラスの『モミ(真珠、磨けば光るということだ)』、そして今回取材したトップチームの『レフア(ムニンフトモモ、小笠原の固有種の花)』。プア・ナニ全てのクラスは年齢制度を設けておらず、あくまで能力で進級する。厳しい!成人女子のクラスは初心者クラスが『ピカケ(茉莉花)』、夜働く人のクラス『ホヌ(カメ)』。『ピカケ』のメンバーは毎年フラ・オハナ後に各自進みたいクラスのテストを受けるのだそうだ。中級者の『ルアナ(楽しい)』はその名のとおり楽しむクラスで、上級者はフラのスタイルによって分かれる。アップテンポな曲を軽快に踊るクラス『ビーデ(ムニンデイゴ)』、『マイレ(ハワイの植物)』はしっとりと奇麗に踊るクラス。『せーれー(小笠原の訛りで「教えて」や「仲間に入れて」)』は島に伝わる古謡を踊る。そしてシニアクラスの『ククイ(ハワイ州の公式木)』まで、どの世代にも踊れるクラスがあるというのがうれしい。男子はグッとシンプルになって、小学生以下の『ちびちびボーイズ』。小学生は『カイ(ハワイ語で海)』、卒業生が所属する中高生クラス『モアナ(大海)』。大人のクラスは『ホヌア(地球)』という。そしてこの島のフラに絶対欠かせない演奏。バンドは『ナァ レオ アロハ(アロハの音)』そしてコーラスグループ『プウ・カニ(唄う)』。その他、中高生たちのバンドが毎年結成されるが、今年は『三輪車』と『四輪駆動』という男らしいバンド名でエントリーされた。フラにとって大切なレイを作るグループもある。『レイズ』は亜熱帯の小笠原ならではの花や植物を使い美しいレイを編む。父島、母島の人口の9人にひとりという多くの人々がフラに関わりながら生活している。

説明が長くなりましたが、今回の『島っ子たちのラスト・フラ』はそんな多くのメンバーたちとそれぞれの家族、島の大人たち大勢の前で卒業生たちがこの夏の『ラスト・フラ』を踊ったという事実を少しでも等身大に感じていただければと思い、ここに補足いたします。

そして、これまで『小笠原フラ』と表記しましたが、実はプア・ナニのメンバーは自分たちのフラを『島フラ』と呼んでいると後日、真名ちゃんに聞きました。ハワイアンのみならず、この島ならではのフラ。 だから『島フラ』。納得です。

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平成22年1月20日
マドロス陽一