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第29回 あこがれのサーフィン


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

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第29回
あこがれのサーフィン

あこがれのサーフィン

アロハ~おはようございます。今朝は肩と腕、首に足腰、全身が筋肉痛でベッドからなかなか起き上がれませんでした……。 今、ハワイはオアフ島に撮影に来ています。

クウネルvol.11で『キス・イン・ハワイ マルちゃんの結婚』を撮影して以来だから、3年ぶりのハワイ、久しぶりのワイキキのビーチです。肩の痛みは重い機材のせいでしょうが、全身が筋肉痛になったのは撮影の合間にサーフィンをしていたからです。

もちろんマドロスは初心者です。サーファーだったら筋肉痛になんてなりませんからね。サーフィン……。
これまで何度かサーファーになりたいと思ったことがあります。20年前にここハワイで初めて体験してから、友達に数回湘南や千葉の海にも連れて行ってもらいました。(そう言えばボードも譲ってもらったなぁ。あのボードどうしたんだっけ?)その度にボードに立つことはもちろん、パドリング(ボードに腹ばいになり、水泳でいうクロールのような状態で漕ぐこと。サーフィンをする上での基本動作)でヘトヘトになってしまい、翌日もしくは2日目に襲って来る筋肉痛に耐えられず、なんだかんだ理由を付け二度とサーフィンはやらないと誓うのでした。そんなことだから何度やっても初心者のままなのです。

もう二度とやらないと誓ったものの、ここハワイで海を眺め、遠くですべるようにかつ豪快に波に乗っている人達を見ていると「かっこいいなぁ~ハワイの力強い波だったら、自分でも乗れるかも!」なんて苦い思い出はどこかへ、またやってみたくなるのです。そのことを地元のサーファーでもあり今回撮影でお世話になっているコーディネーターのJさんに話してみたら「大丈夫だよ! 僕が誰でも乗れるポイントに連れて行ってあげるからさ! 絶対乗れるよ。イージー!」と言うではありませんか。それならばと昨日、再度サーフィンに挑戦しました。Jさんに付きっきりでどの波に乗ればよいのか、波が来た瞬間にボードを後ろから押してもらったりしながら、なんとか数本乗ることができました。今回初めて波に乗ることの気持ちよさを体感し、「良し! 明日も乗るぞぉ~! おーっ!」と興奮を押さえきれなかったのですが先程、すっかり忘れていた筋肉痛の朝を迎えたわけです……。

う~ん。ここがサーファーになれるかどうかの分かれ目の様な気がしてなりません。以前のようになんだかんだ理由を付けて海に入らず、これからずっとサーフィン初心者のままでいるのか。それとも波に乗った時の最高の感覚をもう一度求めるのか、そうしたとして明日夕方の帰りの便まであと何回波に乗れるだろうか。いずれにしても日本に帰れば明らかにまたやらなくなるであろうという虚しさをも考えつつ、海に行こうか迷いながらこの原稿を書いています。

そう言えば、Jさんが言ってたなぁ。「波は自然現象。常に動いている。地球に直接面した海によるいわば地球の鼓動のようなもの。人間が波に乗ることは地球と一体になれた瞬間なのかもしれない。そんなスゴいスポーツはサーフィンだけなんだよ」って。