第38回 ハーリーの男たち
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第38回
ハーリーの男たち
6月15日、昨晩はサッカー日本代表が2010年W杯南アフリカ大会の1次リーグ初戦となるカメルーン戦に勝利した。一夜明け、日本中が朝から騒がしく元気がいい。最高の気分です。ありがとう! 我らが日本代表(4年前の連載第20回『終わってしまったW杯』が懐かしい。あの時の悔しさを忘れてはいけない!)。「本田」の文字が一面を飾ったスポーツ新聞を片手に沖縄・宮古島へ今朝の飛行機で撮影に来ました。
宮古島から車で池間大橋を渡り池間島へ。この日は宮古島とその周りの伊良部島や池間島、来間島などの9カ所でハーリー(海神祭)が行われていた。ハーリーとは漁師たちが海の神に航海安全や豊漁を願う伝説行事で、爬竜舟(はりゅうせん)と呼ばれる木製の漁船(サバニ)で競漕(きょうそう)する海のお祭りだ。池間島のハーリーは今年でなんと116回目を数えるそう。
一隻に漁師や青年団など10名ほどの漕ぎ手が乗り、力強いオールさばきで東、中、西の3隻の爬竜舟が速さを競う。最終競漕では今日の波は風の影響で漁に出られないほど高いというのに、数百メートル沖の折り返し地点で舟をわざわざ一度転覆させる「転覆競漕」が行われた。ひっくり返った舟を起こし、漕ぎ手とバケツで海水をかき出す係に分かれ、ゴールを目指す、海洋民族ならではの過酷な競漕だ。男たちの野太いかけ声とともにバケツとオールが交互に運動し、勢いよく波しぶきが上がる。全身がびしょ濡れで、張り付いたシャツが男たちの日に焼けた身体をあらわにする。その褐色の筋肉は躍動し、動きにはキレがあった。昨晩、サッカーで観たそれと同じように力強く美しい。
午後からは、広場に設けられた土俵で3歳から幼稚園児、小中学生による「江戸相撲大会」(所謂、相撲)が行われ、その後再び青年団により「沖縄相撲」という “まわし”ではなく“帯”をつかみ合ったままとる相撲(見た目は地味だが駆け引きで消耗する体力は計り知れず、1試合3本勝負と試合時間の長さが特徴)大会が開催された。「転覆競漕」から「沖縄相撲」まで、池間島ハーリーの男たちは底知れぬ体力の持ち主だ。男の魅力はやはり肉体と強さなのだと「沖縄相撲」のキレのある動きに惚れ惚れし、自分の弛んだお腹に手を当て思ったのです。
平成22年6月20日
マドロス陽一