電車はいいなぁ。いつもの駅へと運んでくれる電車もありがたいけど、見知らぬ車両を見つけて、どこまで行くのかと終着駅に想いを馳せるのもいい。電車にはなぜか、郷愁を感じる。桜の咲く頃偶然同じ車両に乗り合わせた隣のクラスの気になる子とか。真冬のホームで終電のドアが閉まる直前まで見つめ合う恋人たちとか。故郷を離れる車窓から見た景色とか。見送る人の涙目の笑顔とか。そうか、電車は人や物だけじゃなく、人生の物語も一緒に運んでいるのかもしれないなぁ。

絵・文／水野 学