布袋寅泰さんは、どこまでもエレガントな方でした。 From Editors No.2077
From Editors
編集部リレー日誌
布袋寅泰さんは、どこまでもエレガントな方でした。
私、担当編集Kが布袋さんの音楽に打ちのめされたのは、2008年、高校1年生のときのこと。音楽フェスなるものにはじめて参加しようと、新幹線でひとり東京から掛川へ(自由席は当然のように満席で、立ちっぱなし)。ものすごい人混みのなか、やや不安になりながら辿りついた「つま恋」で開催されていた「ap bank fes’08」、そのシークレットゲストとしてステージに現れた、布袋さんを目にしてのことでした。
「圧倒される」とはまさにこのこと……というほどの、歌、ギターの迫力。そしてなんとも忘れがたいのは、布袋さんのギターソロのあまりの凄さに、Mr.Childrenの桜井和寿さんや、ベーシストの亀田誠治さんらバンドメンバーたちが、驚きを通り越して、笑ってしまっていたその様です。テクニックのすばらしさは当然のこと、けれどもそれだけでは説明のつかない、布袋寅泰の凄さ、奥深さ。それらを全身で体験できた、今振り返っても夢のような時間でした。
……長々と私事を書いてますが、今回、このページを担当することが決まって、わくわくしながらも悩みました。音楽専門誌ではないこのananで、いったいどうすれば読者のみなさんに、布袋さんの魅力をより鮮明に伝えることができるのか? その答えのひとつが、作家・小池真理子さんにエッセイをお願いすることでした。
直木賞はじめ数々の文学賞を受賞なさっている小池真理子さんは、過去に布袋さんの楽曲「EVIL DANCE」で作詞提供をされています。布袋さんの持つ多面的な魅力が凝縮された、布袋さんが歌うからこそ説得力が生まれる歌詞の世界観、ぜひみなさんにご堪能いただきたいのですが、今回ご寄稿いただいたエッセイも、どうかお見逃しなく。拝読しながら編集部でひとり、深く深くうなずいてしまいました。エッセイのタイトルは、「華やかな静けさ」。布袋さんを言い当てる、これ以上ない言葉だと感じます。
そしてもうひとつの答えは、青臭いお願いであることは承知で、布袋さんご本人に“布袋を布袋たらしめる哲学”についての、直球の質問をすること。「世界」「怒り」「愛」「別れ」、そして「大人」について。5つのワードを投げかけて返ってきたお答えは、どれも心のメモにずっと書き留めておきたい言葉ばかり。ご覧いただければ、布袋さんの中に広がる広大な宇宙に、すこし触れられたような感覚になるはずです。
普段の「From Editors」よりも3割増しでお送りしていますが(笑)、最後に取材の感想を。日本ロックシーンの頂点に立つその人は、取材部屋に入るなり、スタッフひとりひとりに目を合わせて挨拶するとともに、自らその黄金の右手を差し出して、握手してくださいました。さらに、撮影中はフォトグラファーのリクエストに快く応え、ギターを持てば、その手の赴くままに五弦を惜しみなくかき鳴らす。インタビューでもいたって柔和に、こちらが硬くならないように気を遣ってくださって……もう、メロメロにならないわけがないですよね。後日、原稿のご確認をお願いした際のお戻しにまで、丁寧にも、お礼の言葉が添えられていました。
書けば尽きることのない感激はここいらで打ち止めにしますが、ぜひに、本誌をご覧いただきたいです。そして、布袋さんご本人が最高傑作と謳う、ニューアルバム『Paradox』も必ずやお手に取ってください。世界中に響き渡る、布袋寅泰という伝説。今回の特集ページが、みなさんがその伝説にリスナーとして加わるきっかけになれば、これ以上うれしいことはありません。(TK)