Tarzan Editors No. 653 定例より
From Editors 定例より
おい、オレは何が言いたいんだ! の巻
今号の「BOOK」は坂井希久子さんに『ただいまが、聞こえない』で著者インタビューさせていただきました。この作品にはある家族が登場して、姉妹母や父、とそれぞれの視点で物語が描かれていきますが、ある同一の事象については見方が変わると、自ずとその位相も変わる、というあたりまえでありながら、だからこそ味わいがある、人の営みがよく現れている作品でした。
たとえば浮気。妻から見た風景と夫から見た風景とでどれほどの違いがあるでしょうか。富士山の山梨ビューと静岡ビューくらいか。いや、もっと、北半球から見上げる三日月と南半球から見上げる三日月の違いくらいか。
あ、これはもしかして同じか。事実と真実、とよく言います。小説の世界には「神視点」という言葉があって、それは作中のどの人物の視点からも描くことができる多元的描写を指すようですが、もし自分たちにこの「神視点」が備わっていたとしたら、もう喜びも悲しみも半分くらいになってしまうかもしれません。
ところで、ガチャガチャやったら、めったに出ないガリガリ君の工場バージョンが当たりました。きっと、その喜びだって………。
●担当:K・H