From Editors No.1960
From Editors
編集部リレー日誌
言葉は時代を、心を、映すものなんですね。
今号は「日本語」について考える1冊です。心地よい人間関係を築くのに、なによりも大切な要素である言葉。その言葉が乱れている今という時代が心配と語ってくださったのは、美輪明宏さん。以前は会社でも、上司は部下に向かって「きみ」と呼びかけていた、それが今では「おい、おまえ」となり…。殺伐とした空気はそんな呼びかけの言葉ひとつにも表れるというお話に納得です。
そして、言葉のTPOについての発言が印象的だった秋元康さん。丁寧な言葉遣いは大切だけれど、それをそのままSNSにもってくるのもまた違うと思うとお話されていた中、それではまるで「ラフなパーティに正装で行くような心地悪さ」と表現されていたのに、なるほどと深く頷いてしまいました。
そんなおふたりが共通して“すてきな日本語”としてあげてらしたのが“ごきげんよう”という言葉。今日では挨拶の言葉として日常的とはいえない?! でも、そういえば…。自分が入学した高校の挨拶が行き帰りとも“ごきげんよう”だったことを思い出しました。『15の夜』まんまの荒れ果てた中学校から入学した私は、学校からの帰り際「さようなら」と挨拶したところ、修道服姿のシスターよりおっとりと「ごきげんよう」と返されて。すっかり目を丸くしたあの日に一瞬にして戻りました。今となっては懐かしくも甘い響き。言葉ってやっぱり深いものです。(C)