マガジンワールド

Tarzan Editors No. 690 編集長かく語りき

Tarzan From Editors 編集長かく語りき

高校生の頃、部活のトレーニングに「ボッカ」という種目がありました。
ボッカ=歩荷。
文字通り、重い荷物を背負って歩く、登山部のトレーニングです。
地下から屋上まで、6階分の階段(記憶では……)を、延々と上って下ります。
砂を入れた一斗缶の重量は、20~40㎏。
この一斗缶をフレームザック(背負子)に括り付け、暑い日も寒い日も雨の日も、10往復とか15往復とか、ひたすらに上って下りる……。
ザックの薄いパッドは肩に食い込み、一歩ごとに大腿四頭筋が唸りを上げ、
ギシギシと膝や腰に容赦なく過負荷を与えます。
窓のない階段は暗く、夏になれば高温の蒸し風呂となって、
部員たちの額から滴る汗が水たまりを作るほど……。
しかも、部の伝統で、この上り下りにスピードを要求されました。
関節の軟部組織が成長しきれていない高校生にとって、
高重量で階段を駆け下りる行為は自殺にも等しく、当然、故障者が続出……。
(「歩荷」トレに安全管理のルールを課したのは、自分が部長になってからでした)
30年前の高校の運動部は、トレーニング科学の光が当たる黎明期。
「水を飲むな」という軍隊式の鍛練から、やっと脱し始めた頃でした。
ま、私たち山登る者は、飲みたくても運べる水の量が限られているので
軽いディハイドレイド(脱水)には、慣れっこではありましたが……。
何せ、水が足りなければ、雪渓の雪を溶かして水を作ったり、
稜線からの水場まで往復1時間を覚悟したり。
はい、水汲みに、下って上って1時間……。
高校生の私のココロとカラダは、確かに、歩荷という鬼トレで鍛えられました。

●『ターザン』編集長 大田原 透
ターザン No. 690

鬼トレ

560円 — 2016.02.25
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ターザン No. 690 —『鬼トレ』

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