無駄のない空間で学ぶ”収納の極意”。 クロワッサン 編集部こぼれ話 No.951
From Editors 編集部こぼれ話
無駄のない空間で学ぶ”収納の極意”。
起きて半畳、寝て一畳、という言葉がある。東京・根岸にある江戸指物師、戸田敏夫さんの工房は、まさに一畳のなかに製品作りに欠かせない道具が、用途ごとにびっしりと、かつ整然と並ぶ。「この仕事は狭いところじゃないと落ち着かないんですよ。職人はどんな広い場所でも壁が使える部屋の隅で作業してますよ」と戸田さんは笑いながら話す。製作工程を見せてもらうと、その狭い空間に収まったノコギリ、ノミ、鉋などの道具を時に手を伸ばしたり、中腰になりながら取り出して使い、終わると収める作業を繰り返す。まるで無駄を省いた収納のお手本。戸田さんが作った文箱を見せてもらう。”銀杢”と呼ばれる桑の木特有の木目の美しさに圧倒される。戸田さんは「実用品ですよ」と話すが、ずっと眺めていたくなるような工芸品である。「何も足さずに、削ぎ落とすことに専念するのが難しいですね。今もどこで完成とするのか悩みますよ」戸田さんのそんな言葉に、一切の装飾を省いたからこそ生まれる”美”を感じるとともに、収納の極意を学んだ気がしました。
(編集K・M)
![手を伸ばせば届くところにほとんどの道具を収納。](https://img.magazineworld.jp/2017/06/951_kobore_img6.jpg)
![完成までに3か月を有して作られた文箱。](https://img.magazineworld.jp/2017/06/951_kobore_img1.jpg)
![引き出しに収まったノミ。戸田さんは作業のなかで瞬時に使うノミを取り出す。](https://img.magazineworld.jp/2017/06/951_kobore_img2.jpg)
![30年来変わらない工房で話をうかがった。](https://img.magazineworld.jp/2017/06/951_kobore_img3.jpg)
![ミニ鉋も用途に合わせて使い分ける。](https://img.magazineworld.jp/2017/06/951_kobore_img4.jpg)
![ほぞ切りと呼ばれる江戸指物特有の工程。](https://img.magazineworld.jp/2017/06/951_kobore_img5.jpg)