鐘の音が響く街 クロワッサン 編集部こぼれ話 No.1036
From Editors 編集部こぼれ話
鐘の音が響く街
禅寺では修行の一環として行われる掃除。今回は掃除から学ぶ、心と暮らしの清め方について観音院の来馬正行住職に取材をした。
掃除がなぜ心や暮らしを清めるか? 取材の中で、決して労を惜しまず、日々の積み重ねこそが重要である、という住職の言葉が心に残る。
掃除がなぜ心や暮らしを清めるか? 取材の中で、決して労を惜しまず、日々の積み重ねこそが重要である、という住職の言葉が心に残る。
取材時に境内を案内していただいた際に、樹々に囲まれた美しい鐘楼が気になった。聞けば、なんと毎朝、明け六つ(午前6時)にこの鐘をつくという。
「朝だ! 起きなさい!と、365日欠かさず、ゴォ~ンと時を知らせています」
そこで住職が、鐘の音にまつわる話を2つ紹介してくれた。
「古くからある付近の不動産屋さんでは、駅周辺の部屋を斡旋する際、必ず鐘の音について説明をしているらしいです。音がしてもビックリしないでほしいこと、そして、寺にクレームを入れないこと。鐘の音が街を守っているのだから、と伝えているそうです」
広場で遊ぶ子どもの声がうるさいなど、生活音に関する感じ方は人それぞれだが、続いている慣習を守る地域があることを知り、心が穏やかになった。
そしてもう一つの話。
「何年か前に、お年を召したご婦人が朝6時に境内で鐘の音に聞き入っている。どうかされましたか?とたずねると『夢がかないました』と。三鷹(隣の街)に住み、毎朝、かすかに聞こえる鐘の音を目覚ましに、いつか寺で、きちんと聞きたいと思っていたそうです」
実際に聞いた鐘の音は、深く染みわたったことと思う。
12月31日大晦日、観音院では除夜の鐘をつく。百八つの煩悩を祓い、新しい年は平穏に健やかにと願いたい。
(ライターO)