From Editors 編集部こぼれ話
一枚の布が目的によってさまざまに形を変える……風呂敷の魅力
『風呂敷、懐紙、手ぬぐい、こんなふうに使えます』の取材で、東京・神宮前の風呂敷専門店『むす美』に、同店のアートディレクターの山田悦子さんを訪ねました。正面のウィンドーには、『ミナペルホネン』とのコラボで生まれた、斬新で愛らしい風呂敷が並び、目を奪われる。リネン地に刺繍を施したものもあり、まるでおしゃれなストールのよう。お弁当包みに最適な小さいサイズの風呂敷は、使いやすい木綿のものが揃っている。もちろん、格式のある正絹の風呂敷など伝統的な風呂敷も種類が豊富にあって、伝統的な和の文化の美しさを実感することもできる。
「風呂敷は、一枚の布が目的によってさまざまに形を変える、とても柔軟性のあるものです。風呂敷は古いもの、そう思わずにまず手にとって使ってみてほしいいですね」と、山田さん。
『むす美』を訪れる人は年齢層も幅広く、外国人の姿も見られる。
「外国のお客様というと印象に残っているのが、あるフランス人の若い男性です。飛行機で隣の席になった日本人の女性が、自分の脱いだコートを、バッグから取り出した美しい布で手際よく包み、さっとしまったのを見てとても感心したそうです。それが風呂敷というものだと知り、日本の文化に、より心惹かれるようになったと話してくれました。そんなふうに、日本人や日本の印象が伝わるなんて、素敵ですね。大切な人のために贈る物を選び、それをどんな風呂敷でどんなふうに包んでお渡ししようか。そんな心遣いは、知らないうちにわたしたちの中にも生きているなあ、と思ったりもします」
そういえば、よくハリウッド映画などで、女性や子どもたちが贈り物の包み紙を盛大に破いて中身を取り出すシーンで、なんとなく違和感を覚えることがある。物をていねいに美しく包むという行為には、心がこめられている。当たり前のようにそう感じられることも、日本の文化であり美意識のひとつなのかもしれない。
店内には素敵なデザインの風呂敷がいっぱいで目移りしそう。風呂敷文化を伝え、新しい使い方を提案する『むす美』。東京都渋谷区神宮前2・31・8 ☎03・5414・5678 http://www.kyoto-musubi.com/(撮影・武方賢治)
(編集RY)