第109回「鍼治療との出会い」
第109回「鍼治療との出会い」
妻が妊活に入り5ヶ月。妊娠する前、2014年9月に、おもしろい出会いがあったんです。とある飲み会で知り合った女の子Yちゃんのお母さんが中国人で、鍼の先生をしていて、難病の方を中心に治療していると聞いたのです。
鍼治療。僕はある時までいっさい信用しませんでした。東洋治療というもの自体いかがわしいもの。占いなんかに近いものだと思っていましたが、20代で大量のダニに噛まれてから、成人アトピーにかかり、苦しみ、20代中盤で知り合った人に漢方をススメられ、漢方の病院に通い始めると、ゆっくりですが、アトピーが治り始めました。それが東洋治療を自分の中で許し始めたきっかけでした。
僕はかなりの肩こりでマッサージによく通っています。「肩こりに鍼はいいよ~」と言ってた人がいたので、東洋治療を信じ始めた僕は家の近所の鍼に行きました。しかし、鍼への恐怖心は強く。結果、肩こりはなにも変わらなかった。その経験は鍼への不信感になりました。
が、結婚してから30代中盤頃だったか、人生で初のギックリ腰になり、妻が自分が通っている鍼の先生を勧めてきました。「絶対行ったほうがいいよ」と。僕の中では鍼なんかで治るわけないと思っていたけど、妻があまりにも強く言うので、歩くのがやっとの体で行ってみると、なんと2時間ほどで歩けるようになったのです。驚きました。通常、二日ほど立てなくなるところをたった二時間。そのとき思いました。鍼は腕だ! 手術と同じでスーパードクターがいるように、鍼の先生もピンキリあって、すごい人はすごいのだと。
ここで話をちょっと元に戻して、中国の鍼の先生。僕の先輩のお子さんがかなり体が悪いということを聞いてたので、その知り合いの女の子Yちゃんに、お母さんを紹介してもらえないか? とお願いしたのです。
子供の病状を説明したら、一度会おうということになり、僕と先輩、Yちゃんと、そのお母さんの鍼の先生、ブンブン先生(仮名)で会ったのです。
初めて会ったブンブン先生は小柄で痩せていますが、なんかアスリートのような体の強さがありそうで、眼力が強い。先輩はブンブン先生に事情を話し、治療をしてもらえることになりました。僕は冗談半分で「中国の鍼の先生って、脈で何でもわかっちゃうって本当ですか?」というと、ブンブン先生、僕の右手をとり、脈を診ました。そして「舌を見せて」と言って数十秒、僕の舌を見た後に言った言葉が「あなた、なんでそんなに体悪いの?」でした。細木数子の「あんた死ぬわよ」以来の衝撃の言葉を放ったまま、あまり詳しいことは言ってもらえず、「それじゃね」と、帰っちゃったんです。そんなひどいことあります? 体悪いことだけは告げて、去っていっちゃうんですから。確かに忙しいから仕方ないんだけどね。もう気になって仕方ないですよね。僕の体はどう悪いのよ! って。
だから娘のYちゃんに頼んで、「お願いだから一回だけでもいいので、僕の体を見てくれないか」と頼んだのです。
かなりタイトな時間の中、ブンブン先生に再び会うことが出来ました。先生の自宅。先生は再び僕の脈を診て、舌を見て言いました。「肝臓は奇跡的にがんばってるけど、腎臓、腎系統がかなり悪いよ」と言うのです。腎系統というのは、腎臓、膀胱、耳、骨、髪の毛、生殖器、脳髄などなどをいうらしい。
僕が2013年にかかった恐怖の病、自家感作性皮膚炎や、体全体の不調など、すべてはそれによるもので、結構限界に来ている。そこを越えると絶対何かの大きい病気になると言うのです。ブンブン先生は、中国人です。難しい日本語は分かりません。日本の芸能人などもわかりません。うちの妻のことも知らなければ、僕のことなんかまったく知りません。放送作家と言っても頭に「?」の嵐。ブンブン先生は僕に聞きました。「あなた結婚してる?」と。僕が「はい」と答えると「あなたの奥さん流産したことあるでしょ?」と言われました。僕が驚いて「はい」と答えると、「やっぱりね。あなたの精子じゃ、そりゃそうだよ」と言ったのです。え? どういうこと? 僕の精子にいきなり苦情? 精子にダメ出し?
詳しく聞くと、ブンブン先生曰く、腎系統がボロボロの僕の体ではいい精子が作り出せてなく、非常に生命力が弱いと。だからせっかく受精して着床しても僕の精子だともたない! と、非常にショッキングなことを言ったのです。
ブンブン先生はショックを整理しきれていない僕に言いました。「子供が出来なかったり流産するのは、私は男性が8割責任あると思うよ」。えーー!? ショッキングな数字を叩きつけられるし、それ以上に、過去二回、妻のお腹で赤ちゃんが残念になってしまったのは僕のせい!? 妻にあれだけ涙を流させてしまったのも、僕のせい!?
落ち込む僕を見てブンブン先生は言いました。「私があなたの腎系統、治してあげるよ。三ヶ月もたてば元気な精子になるから、来年になったら子供を作りなさい」と。
その日は2014年9月下旬。年内子供を作らずに治療すれば、来年、元気に子供を作ることが出来ると。うれしい言葉。
が、しかし。一つ問題があったのです。僕は先生に言いました。「こないだ一回、人工授精してるんです」と。