マガジンワールド

「ブス恋♥スマスマ最終回」 Vol.151

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第151回「スマスマ最終回」

 
イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


僕は19歳のころに放送作家を始めて、気づくと25年近くのキャリアとなっていた。その25年の放送作家人生の中で20年以上携わってきた番組がある。それが『SMAP×SMAP』だ。1996年4月15日に始まった番組は、2016年12月26日、20年9ヶ月で最終回を迎えた。番組が始まったのは僕が23歳の時だった。最初の10年は週二日の収録に毎週行き、番組に向き合っていった。ありがたいことに僕の仕事も増えていき、収録に立ち会うことはなかなか出来なくなっていったが、20年間、放送作家の僕の「心臓」に位置していたことは間違いない。放送作家としてなにも知らない僕を起用し、沢山のチャンスをくれて、絶対に他の番組では味わえない興奮と作る楽しみをくれた。

高倉健さんがビストロSMAPに登場した時の興奮。マイケル・ジャクソンがシークレットでスタジオに現れた時の高揚感。あんな気持ちになることは二度とないだろう。

マドンナにどうしても番組に出てほしくて、プロデューサーに「ラスベガスに直接口説きに行くので、一緒に行きませんか?」と言われ、ラスベガスのコンサート会場に乗り込んだこともあった。が、ロスからラスベガスの飛行機がオーバーブッキングで乗れない状態に。なんとしてでも今日のライブに行かないといけない。プロデューサーと考えて、ロスからなんとタクシーに乗り込み、砂漠を越えて5時間かけてラスベガスに入った。マドンナはしゃぶしゃぶが好きだと聞き、日本から最高級の牛肉を持って行ったのだが、マドンナはお肉を食べない。「魚のしゃぶしゃぶが大好きだった」ということが判明。向こうのスタッフに「俺たちが食べるよ」なんて気をつかわせる結果に。だけどそんな努力の甲斐あってか、マドンナも出演してくれた。

番組開始の時からSMAPはスーパースターの階段を上り始めて、番組とともにトップまで駆け上がっていった。その瞬間を間近で見れたことは、最高の幸せである。

そんな奇跡の番組が終了を迎えることになった。なかなか現実感が湧かなかったが、終わってしまうのだと思うと、家でシャワーを浴びている時に、急に涙が出たこともあった。ただ、妻や子供にその気持ちを伝えたことはなかった。

知り合いの放送作家で樋口さんという先輩がいる。50代前半。すごくうらやましいなと思うことがある。子供はもう大学生。ということは、放送作家としてノリにノってる瞬間を思春期の時期の子供に見せる、いや魅せることが出来たということだ。僕は44歳。これから15年たって僕は60直前。今のように放送作家として働けてないことは確実である。放送作家として、一番輝く時期を子供に見せることが出来ないことは正直、寂しい気持ちもある。笑福が大きくなり、自分の父親が昔、SMAP×SMAPという番組を作っていたと知る時とかあるのかなと想像したりもする。

そして12月26日。番組では生でFAXを募集した。西山アナウンサーの生の枠があった。放送は約5時間。放送が終わった瞬間、番組を立ち上げたプロデューサーやスタッフも沢山スタジオに来ていたことに気づく。

みな涙を浮かべていた。僕は番組を無事に放送することに集中していたので、番組が終わるという実感はこのときも湧かなかったのだが。放送開始当初からビストロSMAPを担当していたディレクターさんが「おさむ、ありがとうな」と言って手を握ってくれた。23歳の若造だった僕を知るスタッフはほぼいない。僕のことを「おさむ」と呼んでくれる人もほぼいなくなった。その人の「おさむ」は僕を23歳のあのころに巻き戻して、手の温もりで涙がこみ上げた。

その日、家を出る時に、僕は妻に「今日、見てね」とかいっさい言わなかった。育児をしていたら見たい時間にテレビなんか見れない。

ただ、見てくれていたようだ。その日。笑福はなかなか寝なかった。だから妻はスマスマの最終回を家で見た。普段は妻がテレビを見ようとすると息子・笑福は「かまって、かまって」的な感じでゆっくりテレビなんか見させてくれない。だが、妻曰く「今日の笑福はすごいもんで、空気に気づいていたのかな。私がスマスマの最終回を見てる時は、笑福は1人で静かに遊んでたんだよな。ずっと」と。1歳半の子供なりに、気づいてくれてたのだろう。

そんなことを聞いて、熱い思いがこみ上げてきた。

息子が思春期になった時に、僕は放送作家をやっているのか? なにをしてるのか? もしかしたら仕事がないかもしれない。だけど、なにをしていても気持ちはブレることなく、胸を張ってその瞬間の背中を息子に見せてあげたいなと強く思った2016年の年末。

SMAP×SMAP、ありがとうございました。


【今回の気づき】

子供はどれだけ小さくても親の心情に気づく



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)との子育てもまる3年。このエッセイをまとめた『ママにはなれないパパ』が、6月21日発売予定! 初監督作(脚本も担当)となる映画『ラブ×ドック』は今年全国公開。