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第98回「洗濯機がティッシュだらけ!?」

ブスの瞳に恋してる
 
イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ
 
第98回「洗濯機がティッシュだらけ!?」
先日、僕がベッドで寝ていたら、妻がまさに鬼の形相で枕もとにやってきました。そして叫びました。「なんてことしてくれんだよー」。寝起きで何が起きているのかピンと来てない僕。かなりの怒りレベル。この時点で10のうち6。旦那さんなら分かるかもしれないが、日常でこのレベル6程度の怒りがたまにある。レベル6の場合は、その場の対応次第でレベル3くらいまで落とすことも出来るが、レベル10まで一気に行ってしまう場合もある。妻はここでようやく怒っている理由を明かしました。「洗濯機がティッシュだらけになっちゃったでしょーー」と。
 
そうです。僕が寝巻に履いていた短パンにティッシュを入れっぱなしにしたまま、洗濯物として妻が洗ってしまったのだ。そして洗濯機の中は妻の下着も含めてティッシュだらけになったのだ。これ、人生で何度か経験あるでしょう。
 
主婦の方からしたら、洗濯し直しだわ、洗濯機の中を掃除しなきゃいけないだわで、面倒くさいことこの上ない。この怒りの理由を聞いて、僕は超ドキドキしていた。洗濯機の中がティッシュだらけになってしまったことに関しては土下座でも何でもする。だけど、僕は一番そこで恐れていたこと。それは「なぜ、ティッシュがそんなところに入っていたのか?」だ。寝巻の短パンだから、街中で貰ったティッシュを入れっぱなしにしてたなんて言い訳も出来ない。そもそもティッシュはそんなに大量ではない。二枚ほどの量なのだ。理由を聞かれるのだけは避けようと、とにかく謝る。

「ごめんなさい」「申し訳ない」「何でも手伝います」

怒っている妻は「ふざけんなよ」と言って洗濯機のほうに行ってしまった。怒っているが、僕は「良かった」と安心していた。ティッシュを入れていた理由を聞かれなかったからだ。が、そんな僕の空気を察するかのように、一度洗濯機のほうに行った妻は僕のところにまっすぐ戻ってきて、睨みながら聞いた。「っていうかさ、なんでティッシュ入れてるの? なんで?」
 
来たーー! 来てしまったーー! 一番聞かれたくなかった質問。ここで色んな言い訳を考える。仕事の時にはいつもいろいろ閃く癖に、こんな時に限って脳は意地悪さんだ。言い訳が思いつかない。そんな焦っている僕を見て、妻がニヤッと怖色笑顔で言ってきた。「本当のことを言いなさい」。妻、こと大島美幸刑事は大体想像がついていたのだ。なぜにティッシュが入っていたのか? 自分で口を割らない僕に大島刑事は脅迫の入った笑顔で僕に自供をうながした。こうなると言うしかない。「ごめんなさい、オナニーした後、チンチンを拭いたティッシュを短パンに入れっぱなしにしてしまいました」
 
言いたくなかった事実。どういうことか? その日、目を覚ますと僕は42歳だと言うのに、元気に朝立ち。妻は買い物か何かに出かけているようだった。チャンス。僕は、短パンを膝までずらして、せこせこと1人H。ここでは罪の意識を重くするためにあえてオナニーと書こう。そう、42歳でオナニーをしていた。女性の方々に言うが、40歳過ぎても男性はガンガンします。中学生の時に、将来30歳過ぎたらオナニーなんてしないと思ってたけど、全然します。もし周りで40歳近辺でオナニーしないと言う男性がいたら、嘘つきだと思いましょう。
 
と、自己弁護するために遠回りしたが、とにかく、オナニーして、発射して、ティッシュで拭いたのだ。その時に、玄関の扉がガチャガチャと開く音がしたのだ。ピーーンチ! 僕は膝までずりおろしていた短パンをさっとお腹まで上げておチンコ収納。妻が寝ている僕を起こすために寝室に来るのが分かる。本当ならいつもオナティッシュはトイレに流しているのだが、その時間もない。妻に見つかる前にさっと短パンのポケットに入れたのだ。と、ほぼ同時に妻が寝室に入ってきて「おはよー」と言う。僕は数秒前まで自分のおチンコをいじっていたくせに、今起きたフリしてる。で、このあと、僕は妻と会話したり色々してたら、短パンのオナティッシュをトイレに流すのを忘れてしまった。そしてその短パンを妻は洗濯してしまい大惨事になってしまったというわけだ。
 
僕の自供を聞いた妻は、僕に言った。「いいか? お前のオナニーしたティッシュ。つまり精子がついたティッシュが洗濯機の中でバラバラになって、洗濯機の中の私の下着に精子がついたんだ。これはいわば、電車の中で好きな女のスカートに精子を出して興奮しているストーカーと一緒なんだよ。いいか? お前はストーカーだ!」と叫ぶ。僕は「ストーカーじゃないです」というが「いや、お前はストーカーだ」と譲らない。たった一回のオナニーでストーカー呼ばわりされて、でも深く反省。一回の軽い罪? を、いかに重く感じさせるか? これも妻の教育法なのかもしれない。
 
ちなみに。僕はこのことをブログに書いた。どこかで妻に言われるよりも自分で書いたほうがいいと思ったから。その数週間後。僕の作・演出の舞台があった。知り合いがすんごい綺麗な女優さんを連れて来た。「この人はおさむさんの書いたもののファンなんですよ」と紹介されていい気分。その女優さんが最初に言った言葉。「こないだのブログの洗濯機の話、最高です」。そっちーーー??


今回の格言
夫の軽い罪を大きな罪だと思わせることが大事
ポケットにモノを入れたまま洗濯して、あとで「しまった!」は時々ありますが、それがティッシュだと……悲惨。しかも今回はティッシュの用途が用途だけに。こんな「笑うに笑えない体験」は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ( 1~4 )にも!



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)との子育てもまる3年。長らくご愛読ありがとうございました。連載をまとめた『ママにはなれないパパ』が、絶賛発売中です!