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第81回「ある朝、妻がパンツを下ろしたら…」

ブスの瞳に恋してる
 
イラスト/ヤマザキマリ
イラスト/ヤマザキマリ
 
第81回「ある朝、妻がパンツを下ろしたら…」

イタズラな女、なんて言葉さすがに聞かなくなったが、イタズラな女が男は好きだ。しかも、男にイタズラするイタズラ女ではなく、自分にイタズラする女に男はドキドキする。いきなり髪の毛をざっくりと切ってきたり、髪の毛を真っ赤に染めてきたり。自分で自分をイタズラするというか、そんな自分を楽しむ女。そんな女に男はヤラれる。
 
うちの妻も数年に一回、イタズラをする。自分に。ただでさえ映画の為に坊主にした妻。映画の撮影は終わったとはいえ、髪の毛はそう簡単に伸びない。ちょっと伸びた坊主になっていて、寝顔は完全に中学生。ガリガリ君が横で寝ているみたいだ。
 
そんな妻が、先日、僕にあるものを見せた。いきなりだ。「これ、見て!」と楽しそうにパンツを下ろした。朝方ですよ。寝ぼけ眼の僕の前でパンツを下ろすんですよ。なんてハレンチな女だと思ったが、その先の目に映ったものに驚いた。驚き度としては2013年、MAXいったかもしれない。
 
一体、パンツを下ろした先には何があったのか? 一言で言おう。ツルツルだった。
 
妻の股間に生えていた真っ黒なものが、ワカメが、ヘアーがまったくないのだ。生まれたまんまの姿になっていたのだ。だから僕は声を出した。ウワーーーーーー!!
 
最初に言っておこう。性的プレーでこんなことをしたわけではない。妻がワカメちゃん、いや、ヘアーをツルツルにしていた理由。それはマラソンに遡る。マラソンって、意外な所にダメージ来るんですよね。僕が中学生の時にサッカー部で毎日2キロとか走らされていたんですが、Tシャツで乳首がこすれてかさぶたになってしまったことがあった。
 
妻がマラソンにチャレンジする前にもこの乳首のことは言われていたらしいが、大丈夫だったらしい。だけど、代わりにダメージを受けたのはヘアーだとのこと。なぜマラソンでヘアーがダメージを受けるのか? 「風が吹けば桶屋が儲かる」ならぬ、美幸走ればヘアーがこすれる。24時間マラソンを走ったことにより、ヘアーがだいぶこすれてしまったらしいのだ。歴代のランナーがみんなそうなったかはわからない。いや、多分なってないだろう。
 
妻は下腹部もたっぷり脂肪があるため、下着と脂肪に挟まれたヘアーがこすれてしまった。包丁を研ぐかのように、24時間かけて、妻のヘアーの一本一本は細長い画
鋲のようになってしまったみたいだ。ヘアーがとがると生活にいろいろ支障をきたすらしい。
 
まずチクチクするということもあるのだろうが、妻が一番面倒だと言っていたのは、トイレでお小水をしたあとに、トイレットペーパーで拭くと、毛の先が紙をひっかく。つまりヘアーの先っぽの部分にトイレットペーパーの残骸が残ってしまうらしいのだ。
 
と、ここまで書いてふと冷静になったが、僕はなんてことをここに書いてるのだろう。女性からしたら「あるある」なのかどうかは分からないが、妻のお小水事情を
書くことになるなんて。
 
で、妻は、思い立ったわけです。ヘアーを一度全部なくしてしまい、生まれ変わらせてやろうと。その方法は、ブラジリアンワックス。妻の知り合いのある芸人さんが番組でブラジリアンワックスにチャレンジして、ヘアーを抜いた時に、意外と楽だと言っていたらしい。ヘアーがないと何が楽なのか男子の僕には分からないが、妻はその言葉が頭に残っていて、覚悟したんです。ブラジリアンワックスにより、ヘアー除去を。
 
以前知り合った人にブラジリアンワックスを始めた人がいたとのことで、そこに行ってブラジリアンしてもらったらしい。妻曰く、「すげー痛かった」と。一部を抜くわけじゃなく、全部抜くわけですから。僕も番組で取り上げたことありますが、一回で全部抜けるわけじゃないんですよね。何回もやらないといけない。ガムテープで脱毛するみたいに。ちなみに、おしりの穴の周りまで処理するには、なんと、後ろ向きになって、自分の両手でお尻を広げて、お尻の穴を自ら見せなきゃいけないらしい。これは立派な罰ゲームだ。それにより、ヘアーを全部なくしてしまった妻。
 
僕が言いたいのはね、いろんな事情があって、ヘアーをまるごとなくしてしまうのはいいんですよ。でもね、想像してください。その時点での妻の髪形は坊主なんですよ。中学生の野球部員みたいな頭なんですよ。その顔でね、パンツを全部下げられて、下の毛が全部なくて生まれたまんまの女の子って感じでね。顔は中2の男子、下は生まれたままの女の子。
 
複雑―――――! 頭の中で処理できない。新しい生き物ですよ。いや、驚いた。
 
一週間ほどたって、僕は妻に聞きました。「結局ブラジリアンして、生活しやすくなったの?」と。すると妻は坊主頭で言いました。「ほとんど変わんねえよ。っていうかスースーして寒いよ」と。
 
結局、何のためにブラジリアンしたんだろうね。でも、イタズラな女だぜ。妻は。
 
早く元通りに生えてきますように!!


今回の格言
イタズラな女に男はドキドキする
24時間マラソンの影響は、こんなところにまで及んでいたんですね。とはいえ、その解決法を「イタズラ」と捉えてしまうところがまたすごい! そんな夫婦のイタズラ話は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!