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ブスの瞳に恋してる♥ 第122回「便秘が原因で、意外な達成感!」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


息子が生まれて、家に来てから一週間ほどたち、あることに気づく。大便、俗にいう「うんち」をする回数が少なくないか?と。赤ちゃんって、おしっこはもちろん、うんこばっかりしてるイメージがあったんだけど、うちの息子、笑福は一日一回もしない。

元看護師でもある妻のお母さんが、最初は出にくい子もいるから綿棒で浣腸してあげると出るよと言って、お母さんに綿棒浣腸を習う。綿棒浣腸とは、綿棒を赤ちゃんの肛門に入れて動かし刺激して、便を催させるというもの。最初それを知ったとき驚いた。肛門に綿棒入れるのかと。綿棒もビックリしてるだろうなと。だって自分が綿棒だと思って考えてくださいよ。耳に入って耳垢を取るつもりで生まれてきた綿棒が、ヘソのゴマを取るためにヘソに入れられたくらいならまだ理解が出来るけど、まさかのまさか肛門に入るなんて。会社で地方に飛ばされる社員の気持ちだったりするんでしょうか。「え?そこ行くの??」みたいな。

でも不思議なもんで、お母さんが綿棒浣腸をすると数分して、ちょっとうんちが出てくれる。

同時期に生まれた友達の赤ちゃんは、一日5~6回、うんちするらしい。が、やはり中には便秘気味の赤ちゃんもいるらしく。そのことをブログに書いたら赤ちゃんの便秘のことで悩んでいるお母さんの多いこと多いこと。便秘だと思っていたら、実は胃の病気だったとか、成長が遅れていたとか、意外なことが理由だったりして。そんなことを学んでいるうちに、うちの息子は大丈夫かなと不安になってきて。

産後一か月たってお母さんが帰ってしまってからは、さらにうんちが出るペースが遅くなる。僕が息子の足をおさえて妻が綿棒浣腸をするものの、なんかうまくいかない。刺激が足りないのか、うんちがGOするところまではいかない。

さすがに一週間出なかったので、まずいなと思い、小児科へ。妻と一緒に行く初めての小児科。診察室に入ると、30代のイケメン先生。さわやか笑顔で対応も優しく、本当ドラマに出てきそうな先生。そこで、便秘のことを相談すると綿棒浣腸のことを教えてくれました。すでにやってることを伝えると、うちの息子をベッドに乗せて、先生なりの綿棒浣腸を教えてくれた。先生が見せてくれた綿棒浣腸は、思ったより綿棒を入れる。そして、綿棒を縦、横、空気を入れるように結構伸ばしていく。目の前で息子の肛門が、上、下、右、左とおもしろいくらいに開いていく。そしてその時間。やっぱりね、妻が家でやっていた綿棒浣腸は、子供がかわいそうだなと思ってしまい、1分くらいでやめてしまう。だけど先生の綿棒浣腸は粘る。どうでもいいが、今、「綿棒浣腸」と打とうとしたら、「綿棒館長」と出てしまった。

浣腸と館長、大違い。生まれ変わってなるなら、「館長」がいいな。と、脱線したところで、先生の綿棒浣腸は5分ほど粘る。正直、息子は結構泣いている。泣いているが優しく話しかけながらお腹を押さえて、ゆっくり広く長く息子の肛門を四次元空間のように動かしていると、突然、「出た―――」と言って出ました。大量のうんちが。一週間分。

するとイケメン先生、超さわやかに「やっと出たね」と言った。なんて格好いい言葉なんだ。

遠距離恋愛してる彼女に、彼氏が「やっと逢えたね」と言うかのように、イケメン先生、一週間分のうんちをした息子に「やっと出たね」とさわやかに言う。これは、もう惚れちゃうでしょ。0歳でも、男の子でも惚れちゃうでしょ。

見事プロの技を見せられた感じでね。とりあえず、先生からは、まず綿棒浣腸を正しくやってみて、それでも出なかったら考えましょうと言われました。

そして帰宅。やはり何もしないと出ない。ちなみにですが、僕は子供の頃便秘症で、母が浣腸をしないとうんちが出ない子供だったらしい。妻も今現在便秘症。そういうところもやはり似るのでしょうか。

そんで小児科に行った後、三日間出なかったので、妻と綿棒浣腸をすることに。綿棒浣腸の時には僕は息子の両足を持ち、ぐっと上にあげて肛門丸見え状態に。大人だったら耐えられないポーズだが子供は無邪気だ。そして妻が、綿棒にオイルをつけて、肛門に入れる。やはり躊躇があるので、僕が「申し訳ないけど、もっと大きく行こう」と言うと、妻は「ごめん、笑福君!」と言って肛門を広げる。すると、粘ること数分、息子が顔を赤らめ始めた。

そしてお腹に力が入るのがわかる。力んでいる、かなり力んでいる。すると出た!! 思い切り出た。先生直伝の綿棒浣腸で初めて出たのだ。僕と妻は声をそろえた。「出た――――――」と。いや、嬉しかった。お母さんが実家に帰ってから息子の便秘が僕ら夫婦にとっては一番の悩みだったので、なんだろう、息子が生まれてからの初めての共同作業、高い山を登り切ったような達成感で抱きしめあいたかった。こうやって親として一歩ずつ登っていくのだなと、おしめに出てきたうんちに感謝してしまった。

その数日後、僕が洋服屋の人からもらった部屋に飾る用の浮き輪を部屋で膨らませていた。

僕は口で思い切り息を吐いて顔を真っ赤にして膨らませていると、息子が僕の顔を見て笑っている。大人が顔を真っ赤にしてるのはおもしろいようだ。そして、その顔を息子が真似し始めた。「うううー」と真似始めた。すると、なんか変なにおい。

そう、息子はうんちをしていた。僕の力む顔を真似してうんこが出たのだ。

どうやら浮き輪のおかげで、息子は力み方を覚えたようだ!! ありがとう、浮き輪!!


 
今回の格言
子育てしてると意外なことで、夫婦で達成感を感じる。
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鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)との子育てもまる3年。長らくご愛読ありがとうございました。連載をまとめた『ママにはなれないパパ』が、絶賛発売中です!