マガジンワールド

「ブス恋♥それぞれのスピードで。」 Vol.165

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第165回「それぞれのスピードで。」

 
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[ヤマザキマリの場合]
やまざき・まり/漫画家。イタリア在住。『テルマエ・ロマエ』は世界8カ国で翻訳。


息子・笑福は2歳と2カ月。覚える言葉の数もかなり増えてきて。先月初めて有名人の名前を覚えました。

それは「ヒカキン」。YouTuberのヒカキンです。

笑福はYouTubeを見まくっています。保育園で節分の豆まきをやってから「鬼」という存在が大好きになってしまいました。そこから、「青鬼」というゲームがあり、そのYouTubeを見るようになり、ヒカキンに行きつき、もう大ファン。

まさか自分の息子がヒカキンの名前を最初に覚えるとは予想もしてませんが、ヒカキンが「バーイ」とやる仕草も真似するようになりました。

そんな話を知人にしたら「笑福君、早いですね」と言われました。タレントの名前を覚えたり真似したり、そういうのが早いということなんでしょうが、やはり、同じ年とかの子供の成長は僕もついつい気になってしまう。

うちの息子より2カ月早く生まれた男の子友達がいます。

その子は1歳半を超えたあたりからかなりしゃべり始めて、2歳を超えた時には、もう親子でかなりの会話が出来るようになっていました。それを見ていたので、うちの笑福が1歳半を超えて、言葉は覚え始めたけど、その友達のスピードと比べたら、だいぶ遅く感じたので、奥さんに「笑福のスピードは大丈夫かな?」と確認してしまったりしました。

生まれてから、ズリ這いして、ハイハイして、立ち上がって、歩いて、言葉を覚え始めて。

その成長の一つ一つで子供は大人に喜びを与えてくれます。だけど、それと同時に、ついつい他の子と比べてしまいます。「うちの子は遅くないか?」とか。早ければ喜ぶし、遅いとちょっと焦ったりする。

大人になった今、仕事をこなすスピードなんて本当に人それぞれ。ワープロで書類にまとめるのも、早い人もいれば遅い人もいる。仕事を覚えるのも早い人もいれば遅い人もいる。

もちろん早い人の方が重宝されるし、仕事ができると言われるのだろうけど。

子供の場合は、みんながその後、普通に出来るようになっていくことのスピードを比べてしまう。友達の子でも、自分の息子の成長がちょっと早いと、安心してしまう自分がいた。

先日、ある障害者の人と話していた時に、こんなことを聞きました。

その人の親は、自分が小さい時に、他の障害のある子供と自分とで、障害の重さを比べていたそうなんです。「あの子の方が障害が重い」とか、比べてしまう。それがとても嫌だったと。

それを聞き、現実を突きつけられた気持ちになったし、もし自分が親になったら、そういう気持ちを持ってしまうかもしれないとも思った。

比べて、安心してしまうのが人なのか?

そんな中。うちの姉からLINEが入った。姉には二人の子供がいて、上の子は成人して、専門学校に行っている。下の子は妊娠7カ月で生まれて、そこからずっと重い障害がある。僕がここで「重い障害」を勝手に書くことも、本当は良くないのかもしれないが、15歳を超えた今でも、話すことは出来ず。去年は、曲がっている背骨を治すための大手術をしたのだが、それで歩けるようにはなったが、まだ背中はかなり曲がっている。

彼は親とお兄ちゃんの愛情をたっぷり受けて育ってきた。

で、そのLINEの内容は。嬉しいことの報告だった。それは、障害のある子供のことだった。「一人でトイレに行ってうんちをすることが出来た」と。その姿を見て嬉しくて嬉しくて泣いてしまったと。その嬉しさを伝えたくて僕にLINEしてきたのだ。

15歳を超えて、ようやくトイレで一人で用を足せる。

僕ら大人にとっては当たり前のことだ。だけど。姉の子供は最近出来るようになった。

姉は子供に、いつか一人でトイレで用を足せるようになってほしいと願い、多分かなりの長い期間トレーニングと教育をして、ようやく出来るようになったのだ。その姿で泣いてしまったと。

そのLINEを見て、ハッと思う。

成長のスピードは人それぞれ。色んなスピードがある。それでいい。

姉は自分の子供に障害がある中で、とても明るく前向きに育てている。その中で、出来るようになったことを、ゆっくりとゆっくりと時間をかけて噛みしめて喜んでいる。

だから、人それぞれにあったサイズの服があるように、その子それぞれにあったスピードがあって、それは決して無理させちゃいけないことで。

だから、自分のところに来てくれた子供のスピードを無理することなく確認しながら、見守ってあげることが大事なんだなと。気づかせてくれた。

お姉ちゃん。ありがとう。


【今回の気づき】

スピードはみんな違う



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)の 出産までをつづった『妊活ダイアリー From ブス恋』「ブス恋シリーズ1~4」が人気。初監督作(脚本も担当)となる映画『ラブ×ドック』は2018年全国ロードショー。